東京高等裁判所 昭和33年(う)1241号 判決
被告人 椎塚公五
〔抄 録〕
所論にかんがみ記録を精査し、これに現われた証拠及び当審において取り調べた証人鶴田義男、同阿部次男の各証言、本件自動車の写真、メモ、被告人の司法巡査に対する供述調書を総合考察するに、原審証人鶴田義男の証言につき、原審は、現行の自動車スピード違反検挙実施状況より見れば、一番、二番、三番の各掛員の審査が相俟つて総合証拠となるもので、単に第二番掛員の証言のみにては違反者の誰であるかも判明せざる状況で、従つて二番掛であつた証人鶴田義男の証言のみにては他の証拠なき限り伝聞証言といわざるを得ないので刑事訴訟法第三二〇条後段により本件犯罪事実の証明の証拠として採用できないとしているが、同証人は本件犯行当時現場において、第二番計時係として他の係官(第一番、第三番)とともに進行する自動車の速度違反の有無を測定していたものである。従つて同証人の本件違反状況についての証言は同人が直接経験した事実に関する供述に外ならないから、該証言は伝聞証言として違法視すべき理由はないのであつて、原判決には法令解釈の誤があるのみならず、右各証拠を検討するときは、訴因として掲げられた本件公訴事実は優にこれを認めることができるし、その他の証拠を調べてみても右認定を左右すべきものを発見することができないのであるから、原審が本件犯罪事実を認むべき何等の証拠がないとして無罪の言渡をしたのは事実の誤認があるものというべく右の誤は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから各論旨はいずれも理由がある。
(大塚 本田 渡辺辰)