東京高等裁判所 昭和33年(う)1393号 判決
被告人 池田武三
〔抄 録〕
被告人は右両名に誘われ、犯行現場に行き、唯、見張りをしただけであつたとしても、被告人は右両名が判示モーターバイクを窃取するのを知り乍ら、これに協力する意思をもつて見張りをしたのであつて、しかも、被告人においても、右モーターバイク窃取の意思をもち、見張りをすることによつて、右両名の実行に協力し、もつて右意思を実現したると見るべき事情であつたことが明らかであるので、被告人の所為たるや、窃盗の従犯をもつて論ずべきではなく、いわゆる共謀共同正犯としての刑責に任ずべきなのである。それ故に、原判決が右判示事実に対し刑法第二三五条第六〇条を適用して、被告人を処断したとて、何等違法というべき筋合ではない。
従つて、これに同法第六二条を適用すべきだといつて、原判決の擬律を非難する被告人の所論は排斥するの外はない。
次に、原判示第二の強盗の事実(長江一雄と共謀して小林源二郎の内縁の妻五十嵐貞子から現金、時計、指輪を強取した事実)は、原判決の挙示する照応証拠によつて、優に、証明することができ、記録を精査してみても、原判決の右事実の認定に誤ある廉は見出だされない。被告人は当初から、小林源二郎方において金品をおどしてでも取ろうとする意思をもつて同人方に赴いたのであり、偶々同人が不在で、その内縁の妻五十嵐貞子が応待するや、同道した長江一雄が所携の切出ナイフを同女につきつけ、「静かにしろ、金を出せ」と申し向けて同女を畏怖させ、その反抗を抑圧した上、判示金品を提供させて、これを強取するに当り、傍に在つて、室入口のドアを閉めなどして右長江の所為を容認し、これを助勢するが如き言動を敢てした事情の見るべきものがあるのであつて、かくのごときは、まさに、同人と意見相通じたるものがあつたからに外ならないのである。してみれば、被告人は右判示事実につき同人と共に強盗の共同正犯としての刑責を負わなくてはならないものというべく、たとえ被告人自身は所論のごとく五十嵐貞子に対し何等威圧的言動に出でたことがなかつたとしても、右判示事実をもつて長江一雄の単独犯行によるものとして被告人の刑責を免れしめるわけにはいかない。
それ故に、該事実につき刑法第二三六条第一項第六〇条を適用して被告人を処断した原判決の措置を非難する弁護人後藤末太郎の論旨第一、並びに被告人のこの点に関する論旨は、いずれも理由ないものとして排斥するの外はない。
(中野 尾後貫 堀真)