大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)17号 判決

被告人 岡部茂

〔抄 録〕

論旨は窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、他人の財物につき終局的に被害者の所持を奪い事実上自己の完全なる支配に移して、これを使用又は処分し自ら所有者としての実をあげる意思をいうのであつて、本件のように一時使用して返還したような場合は所有者の支配を排除して終局的且完全なる自己の支配に移す意思があつたとは認められないから窃盗罪は成立しないと主張する。しかし記録によれば、被告人は昭和三十二年五月九日午後十時頃越村孝之等と共謀の上、東京都文京区根津宮永町十八番地浴場宮の湯こと鈴木石蔵方横の空地上に鍵をかけて置いてあつた鈴木石蔵所有の判示貨物自動車一台を、同人に無断で鍵を使つてエンジンをかけこれを運転し都内を乗り回した上、同都中央区銀座西七丁目電通ビル前に到り、その附近のローヤルクラブに侵入して手提金庫、楽器等を盗み、これを右貨物自動車に積んで再び運転して翌十日午前二時頃右宮の湯横まで戻つてきて元置いてあつた位置に置いて帰宅したというのであるから、たとえ四時間位であつても、被告人等が右貨物自動車に対する鈴木石蔵の所持を侵し自己の所持に移したものであることは明白である。思うに窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいうのであつて、永久的にその物の経済的利益を保持する意思を必要としないのであるから、(昭和二十六年(れ)第三四七号事件昭和二十六年七月十三日第二小法廷判決参照)被告人等が右貨物自動車に対する所有者の所持を奪い、これを運転して乗り廻した上窃盗罪を侵しその賍物運搬のために使用した以上、一時的(約四時間)にも右貨物自動車の権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用する意思即ち不正領得の意思がなかつたという訳にはいかない。

(大塚 本田 渡辺辰)

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