大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)198号 判決

被告人 佐藤新也

〔抄 録〕

原審証人雨宮隆義、同中村栄吉の各供述によれば被告人が判示日時場所において判示のような言動をして同人を脅迫したと云う事実を認めうるようであるが被告人は「監獄の飯を喰つて来た云々」の脅迫的言辞を弄したことは終始これを否認しているばかりでなく原審証人秋葉豊吉の供述前記雨宮隆義の供述の一部、被告人の司法警察員に対する昭和三十一年八月十七日附供述調書、同人の検察官に対する同年八月二十八日附同年九月六日附供述調書を総合するときは、被告人は先に被告人所有の畑一反五畝と雨宮所有の畑一反八畝とを交換することを約し被告人は右土地を引渡したが雨宮は約束した畑の代りに粗悪の土地を秋葉豊吉に引渡してその履行に代えたことがあり且つ右一反五畝の畑地に接続した被告人所有の五畝歩の畑をも被告人に無断で耕作していたので、被告人は判示日時右五畝歩の畑の問題で雨宮方に赴き交渉しておる内双方興奮の上判示場所において被告人は着用の上衣を脱ぎ、雨宮の胸倉を掴み、雨宮も挙を握り、殴るなら殴つて見よ等の言辞を発した事実が認められるが、間もなく話し合いで解決しようと云うことになり、雨宮方で談合の上雨宮が畑の耕作代金として金二千円を払うこととして解決を見たものであり、被告人が前示口論の際興奮の余「俺は監獄の飯を食つて来たんだぞお前等になめられない」等の言辞を弄したとしても、雨宮は前に警察職員であり、且柔道初段の実力を有していたことは同人の供述により認められるところであるから、前示交渉の経緯顛末等と考え合わせると、被告人の所為は未だ以て刑法所定の脅迫罪を構成するに至らないものと認むべく、結局右事実については犯罪の証明がないものといわざるを得ない。故にこの点の論旨は理由がある。

(坂井 山本長 荒川)

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