東京高等裁判所 昭和33年(う)2080号 判決
被告人 小川定男
〔抄 録〕
次に職権により調査するに、原判決はその挙示する証拠により原判示第二および第三の事実を認定し、その「法令の適用」の部において右二個の犯罪は併合罪の関係にある旨説示しているのであるが、この点に関する原判決挙示の証拠を綜合すると、原判示榎本泰子は原判示第二事実記載のように被告人に頭髪をつかんで引き倒されたのを憤慨し直ちに判示あさひ屋の出入口のところから同家調理場に行き警察に電話しようとしたところ、被告人も同女の後を追つて調理場に入り同女の手から受話器を奪ばおうと揉み合つたあげく原判示第三事実記載のように同女の顔面を殴打するに至つた事実が認められるのであつて、この事実から判断すると被告人の原判示第二の事実と同第三の事実とは単一の意思のもとに犯された犯行と認めるのを相当とする。そしてこのように単一の意思で犯されたものである以上、本件のように極めて接着した時間と場所とにおいて同一人に対し連続して加えられた二個の暴行行為は、これを包括して観察し一個の暴行罪を構成するに過ぎないものと解するを相当とするかから原判決がこれを二個の暴行罪が成立するものとし併合罪の規定を適用したのは、事実誤認ないし法令適用の誤を犯した違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点においても破棄を免れない。
(滝沢 久永 八田)