東京高等裁判所 昭和33年(う)2651号 判決
被告人 広田信
〔抄 録〕
被告人は右原判示日時場所において他人所有の椅子用布団二〇枚を勝手に原判示小学校教室から搬出してこれを被告人のいわゆる空家(原判示第一の犯行場所たる小松原学園運動場更衣室を指す)まで運んでこれを寝具に使用した後同室の天井裏にあげて置いたことが明らかである。(なお右両場所は管理者を異にして数百米を距てていることは本件記録に綴られている馬場章岳の司法警察員に対する供述調書及び司法巡査作成の実況見分調書によつて明白である)しかして、およそ窃盗罪の成立に必要な不正領得の意思とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいい、永久的にその物の経済的利益を保持する意思であることを必要としないと解すべきである(昭和二六年七月一三日最高裁判所判決)が故に、被告人の前示所為はまさに不正領得の意思を具現したものと認められるのであつて、使用後返還する意思があつたかどうかにはかかわらず窃盗既遂の罪をもつて論ずべきことはいうをまたないところである。
(尾後貫 堀真 本田)