東京高等裁判所 昭和33年(う)2816号 判決
被告人 小林好正
〔抄 録〕
弁護人は、本件において、被告人の買い受けた成鶏若しくはその売却の斡旋をした鮮牛については被告人はいずれもその賍物であることの情を知らなかつたものである、と主張するけれども、原判決挙示の証拠、殊に被告人の司法警察員に対する昭和三十二年二月十六日付供述調書(記録第一四五丁以下)によると、被告人は昭和三十二年一月八日頃から同年二月一日頃までの間にごこうじと称する男(原判示長島賢隆)から前後七回にわたつて成鶏合計三十七羽を買い受けたのであるが、三回目に買い受けたものは六羽でいずれも若鶏であり、足に千葉県と刻印したニユームの環をつけており、また四回目に買い受けた鶏五羽にも足にニユームの環がついており、最初の一、二回のときの鶏とは異なるものであり、どうも変だという気持が起つて来た折柄、右四回目に買い受けた際実姉内山正三の妻(内山ふみ)から右の鶏は盗品ではないかと注意を受け、被告人も盗品ではないかと思い、今度持つて来た時には尋ねてみようと思い、かつその都度姉に云われたことをも気にしながら、買つて売れば儲かるという気持からその後も、盗品ではないかと思いながら引き続き、原判示のごとく、三回に合計十六羽の成鶏を買い受けたものであることが認められ、また被告人が前記のごとく、実姉内山ふみから注意を受けたことは証人内山ふみの原審公判廷における供述及び同人の検察官に対する供述調書によつてもこれを窺うことができるから、被告人が本件成鶏を買い受けるにあたり、その賍物であることの情を知らなかつたものとなすことはできない。また被告人の司法警察員に対する昭和三十二年二月十六日付供述調書(記録第一六〇丁以下)によれば、被告人は原判示の鮮牛一頭についても鶏同様ごこうじ(長島賢隆)が他から窃取して来たものではないかと思いながらこれを日下勘治に対し、原判示のごとく、売却の斡旋をしたことが認められ、かつ長島賢隆の司法警察員に対する昭和三十二年二月十日付供述調書によると、同人は被告人と織幡部落の入口から本件の牛を曳きながら日下勘治方まで十町位歩いて行つた際、「馬喰さんの家へ行つたら出鱈目を云うぞ」といい、また被告人から牛は何処から持つて来たかと尋ねられ「佐原の方から持つて来た」と暗に佐原方面から盗んで来た旨を告げ、また日下勘治方へ行つてから、小見川阿玉川の高木政夫と偽名を使つたことは被告人も側で聞知していたことが窺われるから、被告人が日下勘治に対し本件鮮牛の売却を斡旋するに際し、その賍物であることの情を知らなかつたものとなすことはできない。
(坂井 山本長 荒川)