東京高等裁判所 昭和33年(う)351号 判決
被告人 五味近信
〔抄 録〕
右控訴の趣意は、その第一、二点を通じ、要するに被告人が建築基準法六条一項に定める建築確認申請書を提出せずその確認を受けないまま本件建築工事に着手し法に違反したことは事実であるが、その後所轄建築主事の指導の下に右確認申請書を提出したうえ確認条件を充足するため努力を続けたにかかわらず第三者の妨害によりその目的を達することができなかつた事情にあるから、結局被告人には法違反の故意なく、被告人に有罪の認定を下した原判決は、判決に影響を及ぼす重大な事実の誤認をしたものであり、また法令の適用を誤つたものであるというのである。
しかし、被告人が所定の確認申請書を提出せずその確認を受けないまま本件建築工事に着手したとき、ここに建築基準法六条一項に違反した罪は成立し、その後仮に確認がなされたとしても、右違法行為をさかのぼつて適法ならしめるいわれはなく、すでに犯された犯罪の責任を阻却する筋でもない。ただ事実上これを不問に付することがあるのみ。記録中原審証人牛村他喜雄の供述によれば、本件法違反の行為があつた後、同人が所轄建築主事として被告人を指導し所定の確認条件を充足することができるよう努力した事実はあるが、それはひつきようかような場合起り得べき違法建築物に対する違反是正のための行政上の処分を強行しなければならないような事態を未前に防ぐため事実上とられた好意的な措置に外ならないことが認められ、このことが被告人の犯した違法行為に対する責任を法律上左右することにはならない。すでに起訴があつた以上残る問題は情状の考慮だけで、この点は原判決の量刑に十分しんしやくされているということができる。
(加納 足立 山岸)