東京高等裁判所 昭和33年(う)422号 判決
被告人 藤原明
〔抄 録〕
論旨第三点について。
原判決が罪となるべき事実として被告人に対する昭和三十二年十月十八日附起訴状に記載された公訴事実を引用しており、右起訴状によると(一)の事実は、被告人が昭和三十二年六月二日頃の午後十時三十分頃横須賀市若松町三丁目四番地遊技場経営者水野進一方店舗の場内放送マイクの設置してある附近において同人より現金二千円を喝取し、(二)の事実は、被告人が更に同日同時頃同人店舗前道路において同人より現金千円を喝取したというのであり、原判決はこれを二個の独立した犯罪と認め、刑法第四十五条前段第四十七条第十条を適用処断していることは所論のとおりである。論旨は本件のごとく同一被害者に対し、殆んど同時刻に極めて接近した場所で、同一罪質に属する犯罪が行われた場合は、これを包括的に観察して単純一罪として処断すべきであるのに、併合罪として処断した原判決は法令の適用を誤つたものであると主張する。しかし被告人の司法警察員に対する供述調書によると、被告人は(一)の犯罪を犯した後傍で被告人の犯行を見ていた友人岩田米男を促して店の表に出たが、岩田にも千円位借りてやろうと思いつき更に(二)のように現金千円を喝取したというのであつて、(一)の犯罪終了後新たに生じた犯意に基いて(二)の犯罪を実行したものであり、相手方を畏怖させるために用いた言葉も二者全く異つているのであるから、(一)の犯罪と(二)の犯罪は別個の犯罪と認めるのが相当であつて、原判決がこれを併合罪として処断したのは正当である。論旨は理由がない。
(大塚 本田 渡辺辰)