大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(う)913号 判決

被告人 大塚俊雄

〔抄 録〕

所論は、本件の細村保夫に対する傷害致死及び大塚満に対する傷害の各結果は、原審相被告人橋本武男の行為により惹起されたものであり、被告人は、右橋本と前記大塚満に対する争闘を共謀し、直接には大塚を殴打したに止まり、橋本が判示兇器を所持していたことは勿論、同人がこれをもつて細村及び大塚を突き刺したことも知らなかつたのであるから、被告人に対しては、刑法第三十八条第二項を適用して、暴行のみの責任を問うべきであるに拘らず、原判決がこの挙に出ず、被告人を傷害致死及び傷害罪に問擬したのは、法令の適用を誤つたものである、と主張する。しかしながら原判決の挙示する証拠によれば、被告人は、判示のような経過により、前記橋本武男と細村保夫、大塚満等に暴行を加えることを共謀し、判示の時判示の場所において、右細村保夫、大塚満外一名との間に喧嘩争闘をなし、各自実行行為を分担し、互に入り乱れて相手方と殴りあううち、右橋本において、判示匕首をもつて順次細村、大塚の両名を突き刺し、判示のような死傷の結果を発生せしめたことを優に認め得るのである。傷害罪及び傷害致死罪の成立するためには、暴行の犯意あれば足りることは、従来の判例上、異論をさしはさむ余地がなく、また、本件の如く、数名の者が他人に暴行を加えることを共謀し、そのうち一名の者がこれを実行して死傷の結果を生じた場合、該暴行に直接加担しなかつた他の者も、右死傷の結果に対し、共同正犯としての責任を負うべきことは論をまたないところであるから、(昭和二三年五月八日最高裁判所第二小法廷判決参照)、仮に前記共謀に際し、被告人には傷害の意思なく単に相手方に暴行を加える意思に止まり、共謀者たる橋本武男が兇器を所持していることを知らず、従つて同人に相手方を傷害する意思を生じたことを知らなかつたとしても、右橋本が前記共謀に基き相手方と殴り合ううち持つていた匕首で相手を刺し、因て相手方を死傷に致したときは、被告人も亦傷害致死罪及び傷害罪の共同正犯としての罪責を免れず刑法第三十八条第二項の適用の余地はない。論旨は理由がない。

(岩田 八田 司波)

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