東京高等裁判所 昭和33年(く)20号 決定 1958年3月27日
少年 E(昭和一五・一〇・一七生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は、原決定摘示第一事実は強姦未遂事件と云つても、初め女性の方も承諾をあたへ、合意の上であつたが、少し抵抗したので止めたような次第で、試験観察期間中に事件を起したということで、少年院送致となつたが、少年も今度こそは大いに改悟しており、今後は決してかかる過ちは犯さないと覚悟をきめ、勤め先では真面日に働いていたことであるから、今一度寛大な処置を求める為、本件抗告に及ぶというに在る。
よつて、少年に対する強姦未遂、窃盗、恐喝等の保護事件記録及び社会記録を仔細に調査して按ずるに、少年が昭和三二年一〇月二日夜静岡市△△×××番地先○○山中腹茶畑内において他の少年と共謀の上F子当時一五才に暴行を加えてこれを強いて姦淫しようとしたが、その目的を遂げなかつた事実はF子の司法警察員に対する供述調書及び少年の司法警察員に対する供述調書の記載によつて十分認められるところであつて、初めF子が少年との情交を承諾したという事実はこれを認めるに足りる資料は存在しない。
而して、少年の各犯罪行為の動機、目的、罪質、態様に、少年の性格、経歴、境遇、家庭の状況等諸般の事情を綜合参酌すれば、これに所論の事情を併せ考えても、在宅保護指導の方法丈では少年の性格の矯正は甚だ困難事と認められる。
今にして、相当期間少年院に在院させ、先づ環境を調整して、その上性格の矯正を為すのでなければ効果なく、将来有能な社会人としての社会適応能力を身につけ得ない虞なしとしないのである。
少年を中等少年院に送致する旨の原判決はまことに相当であつて、原決定には重大な事実の誤認も、処分の著しい不当も存在しない。
本件抗告は理由のないものである。よつて少年法第三三条第一項を適用して、これを棄却すべきものとして、主文のとおり決定する。
(裁判長判事 山本謹吾 判事 渡辺好人 判事 石井文治)