大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(く)96号 決定

本件抗告理由の要旨は、被告人吉田都雄は窃盗被告事件につき昭和三十三年十月七日千葉地方裁判所佐原支部において保釈許可決定を受け、同日釈放されたのであるが、同年十一月一日刑事訴訟法第九十六条第一項第二号第五号の該当事由があることを理由として右保釈を取消し保釈保証金五万円を没取する旨の決定がなされ、右決定謄本は同日弁護人に翌二日被告人にそれぞれ送達された、しかしながら右決定の理由は前記の如く抽象的で如何なる被告人の行動が決定指摘の条項各号に該当するかにつき具体的事実を明示しないから、理由不備の違法があるのみならず若し右理由の趣旨が同年十月二十九日の前記窃盗被告事件の第二回公判期日に被告人が出頭しなかつたことを指称するものとすれば、被告人が右期日に出頭しなかつたのは、当時被告人において別個の窃盗事件のため警視庁に勾留されており、警視庁当局が右公判期日を知りながら被告人の護送を拒んだことによるもので、不出頭につき正当の理由があるものというべく、又別件の窃盗は保釈中東京都内において行われたものであるが、これを以て直ちに保釈の指定条件である無許可旅行に該当しないことも明らかであるから、原審が前示保釈を取消し保釈保証金を没取する旨の決定をしたのは不当であり、その取消を求めるため本抗告に及ぶ、というにある。

よつて按ずるに、原審が被告人に対する本案窃盗被告事件につき昭和三十三年十月七日保証金五万円を以て保釈許可決定をしたこと、次いで同年十一月一日前記理由により該保釈を取消し右保証金五万円を没取する旨の決定のあつたことは本件並びに本案記録に徴し明白である。ところで保釈取消決定を見るに、保釈取消の理由としては単に「刑事訴訟法第九十六条第一項第二号第五号の該当事由があるからこれを取消す」とあるのみでその具体的事実が明示されていないことは所論のとおりであるが、これを本案記録と照合して検討すると、被告人は前記保釈出所後保釈許可決定に指定された住居である千葉県成田市成木新田七十番地の一吉田もと(被告人の実母)方に立寄らず被告人の内妻同県船橋市海神町五丁目三百九十四番地高橋明子方に身を寄せ徒食の日を送り、同年十月十五日東京都内国電秋葉原駅において藤崎勇外一名と共に窃盗(掏摸未遂)を犯し現行犯として逮捕、次いで勾留され、同年十月三十日東京簡易裁判所に起訴されたことを認め得るのであつて、このように、被告人が保釈中制限住居外に居住して徒食し、その上東京都内を徘徊して同種犯罪を犯した事実に照せば、若しそのまま放置しておけば、何時逃走してしまうかも判らない虞があるとするに十分であり、原決定は結局この趣旨において刑事訴訟法第九十六条第一項第二号の「逃走すると疑うに足りる相当の理由があり」又同条項第五号の「住居の制限に違反し」たと認めたものと解するのが相当である。してみれば原決定が前記理由により保釈を取消し保釈保証金の全部を没取したのは結局において正当であることに帰し、決定指摘の条項各号に該当する具体的事実が明示されていないからといつて、これを目して理由不備というのは当らないし、又原決定が、所論のように、公判期日不出頭或いは無許可旅行を以て取消の理由としたものでないこともこれを窺知するに十分である。従つて本件抗告は理由がない。

(谷中 坂間 司波)

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