大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(け)1号 決定

被告人 竹内三郎

〔抄 録〕

本件異議申立の理由は、被告人は詐欺、窃盗被告事件について、昭和三十二年十月一日長野地方裁判所において有罪の判決を受け、同月十一日控訴の申立をなし、同日弁護士伊藤英夫を控訴審の弁護人に選任し弁護届を長野地方裁判所に提出したところ、伊藤弁護人より弁護費用を要求され被告人がこれを調達中に右弁護人が辞任したので、被告人は当然国選弁護人を選任して貰えるものと信じていたのにその選任がなく、所定期間内に控訴趣意書の提出がないとして控訴棄却の決定がなされたもので、右は全く被告人の責に帰することができない事由によつて控訴趣意書を所定の期間内に提出しなかつたのであるから、原決定の取消を求めるというに在る。

よつて記録を調査して見ると、被告人は頭書被告事件について昭和三十二年十月一日長野地方裁判所において有罪の判決を受け、同月十一日控訴の申立をなし、同日控訴審の弁護人として弁護士伊藤英夫を選任し長野地方裁判所に弁護届を提出したことが明らかである。申立人は被告人は伊藤弁護人より弁護費用を要求され、これを調達中に伊藤弁護人が辞任したので、当然国選弁護人を選任して貰えるものと信じていたのにその選任がなかつたもので、所定期間内に控訴趣意書の提出ができなかつたのは被告人の責に帰することができない事由によるものであるから原決定の取消を求めると主張するのであるが、記録によると伊藤弁護人の辞任届は裁判所に提出されていないのであつて、当高等裁判所第十一刑事部においては、弁護士伊藤英夫を被告人の弁護人として控訴趣意書差出期間を昭和三十二年十二月三日までとする通知書を被告人及び伊藤弁護人に宛て発送し、該書面は同年十一月二日それぞれ被告人及び同弁護人に送達されたことが明らかであるから、裁判所が国選弁護人を選任しなかつたのは当然である。そして被告人及び伊藤弁護人より所定の期間内に控訴趣意書を提出しなかつたことは記録上明らかであるから、伊藤弁護人が所論のような理由で控訴趣意書を提出しなかつたとしても、それは結局被告人又は弁護人の責に帰すべき事由によつて所定の期間内に控訴趣意書を提出しなかつたことに帰するのである。即ち伊藤弁護人が弁護人を辞任するならば同弁護人より裁判所に対し辞任届を提出するか、被告人に辞任を申出て被告人より同弁護人の解任届を裁判所に提出すべきもので、そのいずれの手続をもとることなく漫然控訴趣意書差出期間を徒過した以上は控訴趣意書の不提出が正当な事由に基くものと認めることはできない。それ故本件控訴を棄却した原決定は相当であつて、本件異議の申立は理由がないから、これを棄却することとし主文のとおり決定する。

(大塚 本田 渡辺辰)

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