大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和33年(ネ)2069号・昭33年(ネ)1989号 判決

第一審被告は、「乙室は借り受け当初から第一審被告が住居として使用しているものであるから、前記地代家賃統制令の改正によつても家賃の統制は解除されない。従つて第一審原告の乙室に関する家賃増額請求は無効である。」と主張するから按ずるに、原審ならびに当審における第一審被告本人尋問の結果に、当審における検証の結果を綜合すると、第一審被告は、第一審原告から甲室を飲食店を経営する目的で借り受け、また乙室を住居に充てる目的で借り受け、爾来そのとおりに使用してきたこと、その間、第一審被告が病を患つたときには静養のため一時他に滞在し、乙室には雇人だけを宿泊させていたことはあるけれどもそれは一時的のことであつて、それ以外は常に第一審被告自身が乙室に居住しており、第一審被告は右乙室以外には住居を有つていないことが認められる。原審並びに当審における第一審原告本人の供述中右認定に反する部分は信用しない。もつとも、当審における検証の結果によると、本件建物はその構造および場所的情況などからみて元来店舗もしくは事務所用として建設されたものであると推認されるけれども、地代家賃統制令第二十三条第二項にいわゆる「何々の用に供する建物」というのは、建物の外形、構造等に関係なく、専ら現実の使用状況をいうものと解すべきところ、本件乙室の使用状況は前認定のように第一審被告が住居に使用しているのであるから、本件建物の構造等が住居に適しないという事実は右乙室が住居の用に供せられているという認定を妨げるものではない。そうだとすると、前記地代家賃統制令の改正によつても乙室に関する同令の適用は排除されず、その家賃の統制は解除されないから、第一審原告の家賃増額請求の意思表示は無効であり、従つて同室の家賃は従前通り一ケ月金三百四円二十銭であると認めるのほかはない。

(奥田 岸上 下関)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!