大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(ネ)25号・昭33年(ネ)2184号 判決

証拠によると当時の被控訴人の理事大沢貞一および同佐久間市蔵が被控訴人を代表して昭和二一年一一月二二日に控訴人の養父藤間良策から(一)ないし(三)の土地を自動車練習場として使用しこのために必要な施設および附属建物を所有する目的で、賃料一ケ月一〇六一円、期間二〇年の約定で賃借したことを充分に認めることができる。(中略)証拠によると昭和二七年一〇月二一日被控訴人代表者清算人板橋一雄と良策との間で(一)、(二)、(三)の土地の本件賃貸借を合意解約する旨の意思表示が取りかわされたことを認めることができ、これを左右するに足りる証拠はない(中略)。

ところで、証拠を綜合すると、被控訴人は「モーターに関する知識技能およびこれが利用法を普及しもつて国民文化の向上を期する」ことを目的とする財団法人であるが、昭和二七年一〇月一三日その理事会において右目的たる事業が成功不能となつたことを理由に解散の決議をなし、同時に板橋一雄を清算人に選任する決議をなしたこと、板橋が同月二一日藤間良策あてに被控訴人が理事会の決議により解散したので(一)ないし(三)の土地を返還する趣旨の申込をなし、良策がこれを承諾して前認定の合意解約が成立するにいたつたこと、および右解散の決議当時被控訴人の目的たる前記事業の成功不能がすでに客観的に確定していたといえなかつたことを認めうる。これらの事実からすると、良策あての右解約申込の意思表示は被控訴人が解散したことを動機としており、これが右申込に表示されていたことが分り、また、およそ財団法人がその目的たる事業の成功不能により解散したとするためには、その理事会等の機関において目的たる事業が成功不能であると判断するのみをもつては足りず、客観的にこれが成功不能であると認むべき事情があることを必要とすると解されるから、右解約申入当時被控訴人は解散していなかつたといわざるをえないことが分るのであり、従つて、右板橋のなした解約申込の意思表示には動機の錯誤があるとみることができるが、しかし、右錯誤は解散の決議がなかつたのにこれがあつたと誤認したことに基くものではなく(かゝる場合は通常表意者の過失が問題となるであろう)、ただ目的事業が成功不能でないのに成功不能であると誤認したことに基くものか、あるいは目的事業が成功不能でなくても解散の決議をすれば財団法人が解散すると誤認したことに基くものにすぎず(法人と取引する第三者がかゝる誤認を察知することは殆んど不可能に近いであろう)、一方被控訴人が自動車の練習場として他の土地ではなく特に本件土地を使用する必要のあることを認めうる証拠はなく、かえつて当審における参加人本人尋問の結果によると本件(一)(二)(三)の土地はその全部合わせても合計面積が足りない関係で自動車練習場として許可をえられない土地であることが分るのであるから、前記の錯誤は本件賃貸借の解約の申込の要素に関するものとみるわけにはいかない。従つて、被控訴人主張の錯誤の再々抗弁は理由がなく控訴人等の合意解決の再抗弁は理由がある。

(谷本 堀田 海老塚)

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