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東京高等裁判所 昭和33年(ネ)786号 判決

一、控訴人が登録第四〇九九六八号実用新案折畳ドアーの権利者であること、右実用新案の登録は、昭和二十七年十二月九日の出願に基いてなされ、その説明書の「登録請求の範囲」の項には、控訴人主張のような事項が記載されていること、及び被控訴人が昭和三十二年八月頃から、甲号図面表示の構造を有する折畳ドアーを製造していることは、当事者間に争がない。

二、右当事者間に争のない「登録請求の範囲」の記載並びにその成立に争のない甲第二号証(登録第四〇九九六八号実用新案説明書)に記載された「実用新案の性質、作用及び効果の要領」の記載及び図面の全体に基いて考察すれば、控訴人が権利を有する前記実用新案の要旨は、

(一)両端の縦杆間に中央縦杆を多数並列し、これを後述する(二)の壺金に挿入し、各帯金の両袖片の遊離端を中央縦杆の両側に縦に並列した両側側杆蝶着し、中央縦杆中両端のものを、両端の縦杆に夫々取り付けて、相隣る中央縦杆及び両側側杆を交点とし、帯金を辺とした四辺形を多数構成し、その外面に幕布を張設して蛇腹状をなした折畳ドアーの構造と、

(二)右中央縦杆を挿入する壺金として、中央を横方面に切断し、切断線の端から直角に縁迄切断して遊離片を構成し、該遊離片を彎曲して円筒形の壺金を縦方向に構成し、壺金部の上方部分を右壺金よりも大形に彎曲して、半円形彎曲部を構成した同形の二枚の帯金を、その切断部を介して、両壺金部が一線上にあるようにした壺金の構造

との結合を必須要件とするものであることが認められ、従つて右登録実用新案の権利の範囲は、前記「登録請求の範囲」全体に存するものと解せられる。

被控訴代理人は、前記(一)の構造の部分は、本件実用新案登録出願前である昭和二十六年七月十一日特許庁に受け入れられた英国特許第五九六三一五号及び同第五九六六六七号の図面及び明細書抜萃に記載された「折畳式ドアー等」の構造、あるいは、同年八月公刊の雑誌「新建築」に記載された「アコーデイオン・ドアー」の構造と同一であり、本件実用新案出願前すでに公知であつたから、右部分は単に本件実用新案権における物品の型を示す意味を有するにとゞまり、結局本件権利範囲の要点は、前記(二)の構造の部分に限定せられるべきものと主張し、その成立に争のない乙第二、三号証の各一、二、乙第四号証の一ないし七によれば、本件実用新案の登録出願前に、被控訴人主張のような英国特許明細書抜萃及び雑誌がわが国内にあつたことを認めることができるが、そのことが直ちに、前記説明書の全文について考察した本件登録実用新案の権利の範囲を、被控訴代理人主張のように、(二)の構造の部分に限定すべきものとは解されず、その成立に争のない乙第五号証も、右判断を左右するものではなく、これに反する乙第一号証の記載は採用の限でない。

三、次で被控訴人が製造している甲号図面表示の折畳ドアーを考察するに、右は、

(一)二枚の自在板の中央部を交叉状態に組み合せ、かつ交叉部を枢軸で回動自在に枢着したX字状の二枚一組の多数の自在板を順次隣合せて、自在板の端辺を隣同志互に蝶着し、伸縮自在の四辺形多数を形成し、その外面に幕布を張設した伸縮自在の蛇腹状の折畳ドアーの構造と、

(二)二枚の帯金中の一枚の中央部を鍔状にくり抜いて空所となしその上下端の残壁をそれぞれ半円筒状に彎曲し、該半円筒に、別に形成した円筒を抱合し、これを蝋着して短円筒状の軸承部を上下に構成し、次に他の一枚の帯金に対しては、その中央部壁の大半を残しその上下端を切り取つて空所となし、更に該中央部壁を半円筒状に彎曲し、この半円筒内に、別に作つた長い円筒を抱合させ、これを蝋着して比較的長い筒状の軸承部を構成し、後の帯金の軸承部が、初の帯金の上下二つの短円筒状軸承部間に介入するようにした壺金の構造、

との組合せによつて構成されているものであることが明らかである。

四、よつて、甲号図面に表示する構造を有する折畳ドアーが、控訴人の有する登録実用新案の権利の範囲に属するものであるかどうかを判断するに、両者は、それぞれ前記(一)の構造において一致するものであるが((二)の壺金に関する部分を除くことはもちろんである。)、(二)の構造において相違し互に類似しないものであることは、前記認定するところによつて明らかである。

控訴代理人は、右(二)の構造の相違について、両者はいずれもいわゆる蝶番構造として、当業者に周知の方法であり、本件実用新案権の構造の要部に関する差異ということはできないと主張するが、本件実用新案説明書中「登録請求の範囲」の項において、両側側杆と帯金との連結については、「各帯金の両袖片の遊離端は、中央縦杆の両側に並列した両側側杆に蝶着し」と極めて広汎概括的に記載しているのに比較し、(二)の壺金の構造については、「中央を横方向に切断し、切断線の端から直角に縁迄切断して遊離片を構成し、該遊離片を彎曲して円筒形の壺金を縦方向に構成し、壺金部の上方部分を壺金よりも大形に彎曲して半円形彎曲部を構成した同形の二枚の帯金をその切断部を介して、両壺金部が一線上にあるよう組み合せた壺金」と極めて詳細に具体的な構造を記載しており、また同説明書(甲第二号証)中「実用新案の性質、作用及び効果の要領」の項においても、「(前略)而して本案は前記の如き構造にした帯金二個を組合せて中央縦杆にその中央を蝶番式に取り付けたため、伸縮に当り、帯金が矢印Cの方向に回動しmの位置を採つたときは幕布は折畳まれ、mを矢印dの方向に回動しmの位置を採つたときは、幕布は展開され、この際縦線2とこれに組合せた帯金の面と触れて両帯金は平行とならず、従つて四辺形は平たき矩形となり、折畳みは外方に円滑に開き得るものなり。」と記載して、(二)の部分が前述のような構造を採ることによつて生ずる特殊の作用及び効果を強調しておることに鑑みれば、本件実用新案における(二)の部の構造は、控訴代理人の主張するように、あらゆる種類の蝶番構造を包含するものではなく、右「登録請求の範囲」に記載し、かつ前記特殊の作用効果を有する特定の構造に限定されるものと解するのを相当とするところ、甲号図面に表示したところのものは、その構造において必ずしもこれと一致するものでないばかりでなく、原審証人大野晋の証言によれば、本件実用新案説明書に記載されたような前記特殊の作用効果を有しないことについて、一応の疎明を得られるから、両者は本件実用新案権の構造の要部に関する差異でないとする控訴代理人の主張は、これを採用することができない。

してみれば甲号図面に表示する構造を有する折畳ドアーは、本件登録実用新案の必須要件の一に属する(二)の構造を欠くことにより、その権利の範囲に属しないものといわなければならない。

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