東京高等裁判所 昭和33年(ラ)39号 決定
原審が適法に確定した事実は左記のとおりである。すなわち、再抗告人が東京簡易裁判所昭和二十七年(ユ)第五五九号調停調書にもとずく強制執行について、同裁判所に請求異議の訴を起すと共に、執行の停止を申し立てたところ、同裁判所は再抗告人に金一万円の保証を立てさせた上、強制執行の停止決定をなした。再抗告人は第一審で敗訴判決を受けたので、東京地方裁判所に控訴をなすと共に、執行の停止を申し立てたところ、同裁判所は再抗告人に金二万円の保証を立てさせた上、強制執行の停止決定をなした。
再抗告人は、右のように東京地方裁判所に新たに金二万円の保証を立てたことによつて、東京区裁判所に立てた金一万円については担保の事由が止んだと主張し、この点についての従来の判例の態度は二様に分れて統一されていない。当裁判所は、原決定と同じく、再抗告人の主張が理由ないと解するが、その理由については原決定の理由と同一であるからここに引用する外、左記の理由を附加する。再抗告人は請求異議の訴は第一審で敗訴判決を受けたのであるから、控訴審で第五四七条第二項によつて執行停止をなすにさいしては、事実上の点について、第一審と同様に疎明ありとは必ずしも認め難い場合があるから、控訴審の保証金額が金二万円で一審の金一万円の保証金額よりも多いからといつても、右の点を考慮して保証金額を増加させたと認めることができるから、当然第一審当時の損害をも含めて保証金額を定めたものとは認められない。ことに、控訴審で第一審当時の損害額を含めて保証金額を定めるということは、保証を立てる者にとつては、第一審の保証を立てて後、第一審で立てた保証について返還を受けるまでの間は、第一審当時の損害額については二重に保証を供することになるばかりではなく、その部分について新たに保証を供した後に、改めて第一審の保証について取消決定を受けて返還を受ける等徒らに面倒な手続を重ねることになるのであるから、特別の事情の認められない限り(再抗告人は右特別の事情についてはなにも主張立証していない)、控訴審ではその審級のみのことを考えて保証を立てさせたと認めるを相当とする。
(柳川 村松 中村匡)