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東京高等裁判所 昭和33年(ラ)695号 決定 1959年3月16日

抗告人 大森きよし 外一名

主文

抗告人大森きよしの抗告を却下する。

抗告人大森貞義の抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由は、(1) 前記仮登記抹消請求事件について、被告藤井三郎は昭和三十三年八月二十九日の最初の口頭弁論期日において抗告人大森貞義の補助参加申出につき異議をのべずして弁論をしたから民事訴訟法第六七条によつて異議をのべる権利を失つているものである。これを無視してなされた原決定は違法である。(2) 同年十月一日のみぎ事件第二回口頭弁論期日に同被告が参加につき異議をのべたのにたいし原裁判所は、「異議についての決定は次回口頭弁論期日たる同年十一月二十四日にする」と告知しながら同年十月三十一日その決定をなしたもので、原決定は抗告人両名をあざむいた違法の裁判である。(3) 前記仮登記抹消請求事件被告藤井三郎はみぎ事件に提出されている甲第三号証の一(売買契約書)を証拠として仮登記仮処分の申立をしたものであるが、被告人らは同被告にだまされて被告をして売買契約書を偽造する機会を与えるような結果となつたもので被告をしてその仮登記を抹消せしめねばならない義務と責任があるから抗告人大森きよしの名で前記仮登記抹消の訴訟を提起し、抗告人大森貞義はみぎ大森きよしのため補助参加の申出におよんだので参加につき法律上の利益がある、というにある。

先ず抗告人大森きよしの抗告の適否につき審査するに、当該訴訟の当事者は、補助参加の申出につき異議を述べる権利をあたえられているが、進んで、補助参加人の参加をうながすような行為をすることは法律上みとめられていない。それゆえ参加の申出を排斥した裁判に対して訴訟の当事者は、不服の申立をすることをえないこと自ら明かである。したがつて本件訴訟の当事者である同抗告人の抗告は却下をまぬがれることができない。

次に抗告人大森貞義の抗告につき案ずるに本件記録に徴すれば抗告人大森貞義が本件補助参加の申出をしたのは前記訴訟事件の昭和三十三年十月一日午後一時の口頭弁論期日において参加申出書を陳述してなされたもので、このとき被告藤井三郎訴訟代理人両角誠英はただちに異議をのべたこと、あきらかであり、また前記訴訟事件担当の裁判官がみぎ補助参加申出許否の裁判を昭和三十三年十一月二十四日の口頭弁論期日になす旨告げたとの抗告人の主張については、みぎ事件の口頭弁論調書になんらその旨の記載がないからこれをみとめるによしないところである。なお、抗告人大森貞義が前記訴訟事件の原告大森きよしの相続人であるということが補助参加をなすについての法律上の利益あるものといえないこと原決定の説示するとおりであり、また抗告理由(3) のような事実があつたとしてもこれが抗告人大森貞義にとつてみぎ補助参加をなすについて法律上の利益あるものといえないこというまでもない。同抗告人の本件抗告は理由なく棄却すべきものである。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 牧野威夫 谷口茂榮 満田文彦)

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