東京高等裁判所 昭和33年(行ナ)50号 判決
一、特許庁における手続経過、本願発明の要旨並びに審決理由に関する原告主張の一から三までの事実は当事者間に争いはない。
二、右当事者間に争いのない事実に成立に争いのない甲第一ないし第三号証及び乙第一号証を総合すれば次の事実が認められる。
(一)、原告の本願発明の要旨は「液体を含浸する繊維質薄材料をほぼ空気の存しない加熱室を通過させて処理するに当り、この材料の表面上に間隔をおいて過熱蒸気の噴流を衝き当て、この過熱蒸気はその速度を適当に選定して一部が凝結してその材料上に十分な潜熱を放出し、もつてその温度を含浸液体の沸点にまで上昇させて、その材料の表面のみならず内部に閉結されている湿気をも処理の終りまで連続して蒸気に変じ、この蒸気は材料内における膨脹によつてその表面に押し出される如くする工程と、上記間隔をおいて設けられた表面区域間に吸込作用を生成して、材料表面から蒸気を駆除させる工程と、この蒸気を再加熱して上記加熱蒸気の状態に達せしめる工程を具備する方法」にあるものであり、結局この発明は、液体を含浸する繊維質薄材料をほぼ空気の存しない加熱室を通過させて処理する方法に関するものであつて、この場合、
(1)、材料の表面上に間隔をおいて過熱蒸気の噴流を衝き当て、この加熱蒸気はその速度を適当に選定して一部が凝結してその材料上に十分な潜熱を放出し、もつてその温度を含浸液体の沸点にまで上昇させて、その材料の表面だけでなく内部に閉結されている湿気までも処理の終りまで連続して蒸気に変じさせ、この蒸気は材料内における膨脹によつてその表面に押し出されるようにする工程、
(2)、また右間隔をおいて設けられた表面区域内に吸込作用を生成して、材料表面から蒸気を駆除させる工程、
(3)、この蒸気を再加熱して前記の過熱蒸気の状態に達せしめる工程、
以上の三工程を結合したことをもつてその必須の要件とするものである。
そして右発明のねらいとし、その特徴とするところは、その明細書の記載からすれば、
「本願発明の原理を詳述すれば、凡そ布、紙その他の材料を乾燥する公知の方法は、被処理材料に熱流体例えば熱空気を接触させて該材料の温度を逓増的に上昇させるのである。かかる公知方法は非常に時間を要するが、その理由は次のとおりである。
(イ)、温度上昇が逓増的であり、従つて緩慢である。
(ロ)、蒸気の蒸発が被処理材料の露出表面だけで行われ、その内部に存する湿気はまず毛管現象により表面まで昇つて来た後に初めて蒸発せしめられる。且つこの毛管現象による湿気の移動は頗る緩慢である。
かかる公知の乾燥方法に対し、本発明は単に被処理材料の温度を上昇せしめるのでなく、被処理材料全体の温度、すなわちその表面及び内部双方の温度を蒸発せしむべき液体の沸点まで実際上瞬間的に上昇せしめるものである。これにより材料表面における蒸発が強烈となるのみならず、材料内部の液体が瞬間的に蒸気に転換せられ直ちに内部から放出され得るのである。換言すれば、内部の液体が毛管現象によつてまず表面まで移動した後に蒸発するという緩慢な過程をとることなく、実際上一瞬にして排出されるのである。
これがためには被処理材料全体の温度を排出すべき液体の沸点まで瞬間的に上昇せしめるに十分な単位時間当りの熱量を導入しなければならない。これは多大な熱量であつて、顕熱だけを有するに止まる熱空気によつて十分な熱量を導入することは熱空気温度が高くなりすぎて実際上不可能である。
本発明はこの難点を過熱蒸気を使用することによつて克服したものである。すなわち過熱蒸気は顕熱とともに潜熱を有し、この潜熱は過熱蒸気が低温度で処理装置内に導入される被処理材料に接触した時部分的に凝縮することによつて発現され、多量の熱を瞬間的に発生し、もつて材料内部の液体を瞬間的に蒸発せしめるのである。この部分的凝縮によつて液体が生じても、これは材料の表面上にあるから、本発明の目的を阻害することはない。
要約すれば、「本発明は、被処理材料に向つて過熱蒸気の噴流を、単位時間内に導入される熱量が、該過熱蒸気の部分的凝縮による発熱をも含めて、被処理材料の表面及び内部の温度を排出すべき液体の沸点まで上昇せしめるに十分であるような温度及び量において噴出せしめることを特徴とするもの」
であつて、その作用は、液体を含浸する繊維質薄材料に空気の存しない加熱室で過熱蒸気を衝き当てることにより、その顕熱と潜熱とによつて、材料中に含浸された液体を、被処理材料の全体の温度、すなわちその表面及び内部双方の温度を右液体の沸点にまで実際上瞬間的に上昇させて、その一部は表面から蒸発させ、内部のものも直ちに蒸気となつて膨脹して外面に押し出すようにし、この蒸気は再び加熱されて反覆使用するようにした点にあつて、その効果は、従来の方法では被処理材料が過度の乾燥によつて硬く、もろくなる危険がある反面、湿気の不必要な駆出しに時間と熱とを空費するものであるに対し、(イ)本発明はかような欠陥その他不利益を伴わないで、被処理材料中に予定された湿気含有率を確保させ、(ロ)材料の表面並びに内部を有効に乾燥(水分蒸発)させて、湿気駆出に費す時間を減少し、(ハ)被処理材料の処理条件、すなわち湿気、温度及びさらし時間の相互関係を、材料の乾燥度が予定された又は所望の程度となることを確保するように調節制御することができ、(ニ)被処理材料から駆出された湿気を更に材料乾燥のための過熱蒸気に転換することができる等の目的を達することができ、結局、本願発明は、被乾燥物を損傷することなく(硬化、軟化、変色等をさせないで)、高速度に乾燥することができ、しかも被処理物の内部の湿気までを駆出して乾燥を適確に行い、その湿気が蒸気に変えられたものを再び乾燥用の蒸気として使用することにより、乾燥の熱効率を高めることができる効果を有するものである。
(二) また審決で引用例とせられた米国特許第二、一一九、二六一号明細書(この明細書が本件特許出願の優先権主張日の前において、わが国の公知文献となつていた事実は、原告の明らかに争わないところである。)に記載されているものは、本願発明のように、液体を含浸する繊維質材料をほぼ空気の存しない加熱室を通過させて処理(乾燥)する方法に関するものであつて、この場合も、
(1) 材料の表面に過熱蒸気の噴流を衝き当てる工程、
(2) 材料の表面から蒸気を除去する工程、
(3) この蒸気を再加熱して前記の過熱蒸気の状態に達せしめる工程、
以上三工程を具備しているもの(このことは原告もこれを争わないところ)であつて、この発明も「従来普通に使用されている繊維質材料の乾燥方法は、加熱空気の気流の作用によるものである。しかしこの方法では、加熱空気の温度が予め定めた最高極限(華氏二〇〇度附近になることもある。)を越えると、熱気の高温すぎることのために、繊維質材料の質の変化、例えば色若しくは弾性若しくは強度、若しくは単繊維の弾性及び強度等の減少を伴う。なおこのような普通の乾燥方法は、思わしくない不均一な縮みの原因となるもの」であることから出発して、これらの欠点除去の方法として、「若し繊維質材料の乾燥に当つて、大体空気のない過熱蒸気の作用を受けさせるならば、またこれが必要に応じ華氏二〇〇度以上の温度であるならば、乾燥工程は媒体の関係温度の高温のために著しく促進されるばかりでなく、乾燥は被処理物の色の変化もなく、弾性、強度の減少も、また思わしくない収縮もなく達成されることを発見した」というのであつて、その作用効果は、液体を含浸する繊維質材料に空気の存しない加熱室内で過熱蒸気を噴射して衝き当てることによつて、乾燥工程は媒体である過熱蒸気の関係温度の高温のために著しく促進され、乾燥は色の変化もなく、弾性、強度の減少も、また思わしくない収縮もなくこれを達成することができるものであり、乾燥目的に用いられる過熱蒸気の少くとも或る部分は材料自身から蒸発した蒸気を反覆使用するというにあるものである。
(三)、審決は右両者を比較し、両者は「液体を含浸する繊維質薄材料をほぼ空気の存しない加熱室を通過させて処理するに当り、その材料の表面上に過熱蒸気の噴流を衝き当て、その材料の表面から蒸気を駆除させる工程と、この蒸気を再加熱して上記過熱蒸気の状態に達せしめる工程とを具備する方法」において一致し、ただ両者間には、前者すなわち本願が、繊維質薄材料に衝き当てる過熱蒸気の速度を適当に選定して、一部が凝縮して、この材料上に十分な潜熱を放出し、含浸液体の温度を沸点にまで上昇させ、この材料の表面のみならず内部に閉結されている湿気をも処理の終りまで連続して蒸気に変じ、この蒸気は膨脹によつてその表面に押出される如くする点、過熱蒸気を吹き出す間隔をおいて設けた吹出孔口(特許請求の範囲の項には「間隔をおいて設けられた表面区域」と記載されている。)の間に吸込作用を生成して材料の表面から蒸気を駆除させるようにした点においてそれぞれ相違するところが認められるが、引用例のものも過熱蒸気を繊維質薄材料に吹きつけるものであり、従つて過熱蒸気の一部はその表面上で凝縮して潜熱を放出し、繊維質薄材料の含浸液体の温度をその沸点にまで上昇させ、内部の湿気をも蒸気に変ずる現象を部分的には呈するものであることは十分認められるところであつて、本願のようにこの現象を処理の終りまで連続して行わせることは、抗告審判の審理中に提出された訂正書で明らかにされた点であるが、この点は結局過熱蒸気の供給量を必要に応じ適宜に定めることは技術常識と認められるので、この点について発明を認めることはできないとし、また加熱媒体を間隔をおいて設けられた吹出孔口から吹き出し、その間に吸込作用を生成して材料の表面から蒸気を駆除させることも、熱気式の乾燥装置においては極めて普通に行われていることであつて、この点にも発明を認めることができないので、結局本願の発明は引用例のものと同一発明の域を出ないものと認める、としているものである。
三、そこで右審決の当否を検討する。
(一)、本願発明のものと引用例のものとが、ともに審決のいうように「液体を含浸する繊維質薄材料(引用例のものでは繊維質材料(一例としてレイヨン)は糸条或いはこれらで織成された織物が上げられている―この点は前示乙第一号証によつて認められる―ことから見て、これが繊維質薄材料であることは明らかである。)を、ほぼ空気の存しない加熱室を通過させて処理するに当り、その材料の表面上に過熱蒸気の噴流を衝き当て、その材料の表面から蒸気を駆除させる工程と、この蒸気を再加熱して上記過熱蒸気の状態に達せしめる工程とを具備する方法」であることは、その両者を比較して明らかなところである。
(二)、そして両者はともに、従来の熱空気による繊維質薄材料の乾燥方法が持つ欠点、すなわち、材料の弾性、強度等に及ぼす悪影響の除去を目途とし、また処理行程の促進と材料自身から蒸発した蒸気を再加熱して、これをまた加熱蒸気として反覆使用することによる熱効率の向上とを計らんとするものであつて、両者はともにその解決せんとする課題を同一にするものであり、しかもその解決を過熱蒸気の使用という同一物質の使用によつてこれを達成したこともまた両者同一であること、右認定事実からして明らかである。
(三)、そして右両者は、前記各必須要件において、(3)と(3´)は互に相等しいものと認められ、(2)と(2´)とは多少の相違がないではないが、ともに材料の表面から蒸気を駆除するものであつて、これを(2)のように「間隔をおいて設けられた表面区域内に吸込作用を生成して」することは、この種熱気式乾燥装置においては極めて普通に行われているものであること審決指摘のとおりと認められるので、引用例のものの(2´)に(2)のような吸込作用生成を起させる旨の記載がなくても、これはそれを当然の前提としてその記載を省略しているにすぎないものと認められ、結局右(2)と(2´)とはこれまた相等しいものと判断せられる。
(四)、 そこで問題は(1)と(1´)との点である。両者がともに材料乾燥用のために、材料の表面に過熱蒸気の噴流を衝き当てるものである点で相一致することは明らかであるが、引用例のものの(1´)にあつては衝き当てるべき過熱蒸気の速度については、格別何らの明言もしていないのに対し、本願発明のものの(1)においては、この衝き当てるべき過熱蒸気の速度を特に選定し、この「加熱蒸気の一部が凝縮して材料上に十分な潜熱を放出し、その温度を含浸液体の沸点にまで上昇させて、その材料の表面だけでなく内部に閉結されている湿気までも処理の終りまで連続して蒸気に変じさせ、この蒸気は材料内における膨脹によつてその表面に押し出されるように」するよう、特にその速度についての条件を定めているのである。
しかし引用例のものにあつても、繊維質材料の乾燥に当つて過熱蒸気を使用し、しかも必要に応じ華氏二〇〇度以上の温度のものを使用すれば、乾燥工程は媒体の関係温度の高温のために著しく促進されるものであることが明瞭に記載せられていることは前記のとおりである。そして沸騰状態で液体を蒸発させるには単位時間内に極めて多量の熱を供給し、従つて極めて多量の蒸気を作用させる必要があることは技術的常識である(この点は本訴で原告もこれを認めている)。そしてまた、材料内部の湿気が毛管現象によつて材料の表面まで現われ、その後蒸発を起すというのでは、毛管現象による湿気の移動が非常に緩慢であるために、乾燥に多くの時間を要することは、原告自身本願発明の明細書にも記載し、また本訴でもこれを主張しているとおりである。それに過熱蒸気が凝結点以上に熱せられたものであること、また引用例の前記部分の記載が、特に加熱蒸気の温度を華氏二〇〇度以上とする場合についての記載であることから考えれば、引用例のものにおいて、乾燥工程が媒体の関係温度の高温のために著しく促進されるという右の記載は、引用例のものにおいても単位時間内に極めて多量の熱を供給し、極めて多量の蒸気を作用させるものであつて、この高温多量の加熱蒸気を使用し、これを作用させることによつて、材料表面の乾燥だけでなく、媒体たる加熱蒸気の一部が材料上で凝縮して潜熱を放出し、材料中の含浸液体の温度をその沸点にまで上昇させ、内部の湿気をも蒸気に変じ、これが膨脹によつて材料表面に押し出される現象をも呈することによつて右の促進がせられる趣旨において、その記載がせられているものと解するのが相当であつて、この現象を処理の終りまで連続して行うことは、材料を加熱室内を通過せしめ、その通過中にその乾燥工程を終了するこの種装置においては当然考慮さるべき事項にすぎないから、引用例のものにおける過熱蒸気の供給量、温度ないしその速度もまた、特にこの点についての明言がせられていないにしても、本願のものと格別相違があるものとは認められず、従つて右(1)と(1´)の点もまた結局同一のものと認めるのが相当である。
以上のとおりであつて、原告提出の甲各号証その他本件の全資料によつても、右の認定及び判断を左右することはできないものと認められるので結局本願発明はその全体において引用例のものと同一発明の域を脱しないものと認めざるを得ないところであつて、大体においてこれと趣旨を同じくする本件審決は相当である。
四、(一)、原告はまず、本願発明においては特に過熱蒸気を被処理物の中の液体全部が沸騰蒸発すべき割合において使用するものであり、このような量の決定は、審決のいうように「結局過熱蒸気の供給量の程度の差に止まり、乾燥に当つて過熱蒸気の供給量を必要に応じ適宜に定めることは技術的常識」といわれるようなものでは絶対になく、審決はこの点で誤つた認定をしているものと主張する。しかし審決が右の判断部分において、過熱蒸気の供給量を技術常識の範囲内のこととしたのは、本件の装置において供給せらるべき過熱蒸気の全量についてのことではなく、過熱蒸気によつて起される本願発明のような現象を「処理の終りまで連続して行わせる」との点についてだけの立言にすぎないことは、前認定の審決理由に徴して明らかである。そして右立言は過熱蒸気の供給によつて原告主張のような現象の起ることを前提として、これを、処理の終りまで連続して行うことは、結局処理室内の全処理行程に亘つて、どの部分にどの程度の蒸気を供給するかの問題であり、これは必要に応じ適宜に定めることのできる技術常識の範囲内のこととしたにすぎないものと解するのが相当であつて、原告の右主張は、審決理由について何らかの誤解に出たものと解するの外はなく、とうてい採用に値しない。
(二)、原告は、本件発明におけるような継続的乾燥方法においては、所望の結果、すなわち沸騰状態における蒸発は、単に過熱蒸気を使用することだけで自動的に得られるものでなく、被処理材料のすべての部分内で含浸液体を沸点まで上昇させて、この沸点で蒸発するように、過熱蒸気の条件をその温度と速度と量とについて定め、しかも該材料と液体との速度と温度とをも考慮して定めなければならないのであり、この条件下で乾燥を実施するのが本件発明の要旨であるという。しかし、引用例のものも、単に過熱蒸気を使用するだけのものではなく、その温度、速度ないし供給量を被処理材料のそれらとの関連において定めたものを使用するものと解すべきこと、前に認定したところ(その奏する作用効果等の点)からしても明らかというべきであるから、右の点において本願のものと引用例のものとの間に差異があるものとはこれを認めることはできない。
(三)、原告はまた、引用例のものにあつては、過熱蒸気によつて含浸液体の蒸発をその沸点において行うことについては毫末も記載せられていないという。そしてこのことは、引用刊行物に明らかに記載せられた表現だけを見る限りにおいては、そのとおりであろう。しかし右刊行物記載の発明においては、右のことは、たとえこれがそのままの形で明瞭に記載せられていないにしても、その記載の全体から見れば、右の趣旨をくみとるに難くないものであること、前記認定事実からして明らかであるから、原告のこの主張もこれを採用することはできない。
(四)、原告はまた引用例のものでは処理瓦斯の排出通路に対する考慮が全然払われていないから、被処理物の面からこれに衝突した乾燥流体を速かに排除することが不可能であり、ために含浸液体の沸点に達するに十分な程度に乾燥流体を被処理物の全面に一様に供給することはできないと主張する。しかし、この種熱気式乾燥装置において、処理瓦斯の排出通路について本願のもののような配慮をすることは極めて普通に行われるところであつて、引用例のものも当然その配慮をしているものと認むべきこと前に判断したとおりであるから、この原告の主張も失当である。
(五)、原告はまた引用例のものは、被処理物の表裏両面に凝縮可能な乾燥流体を衝突させるものでないから、本願のもののように被処理物の内部にある含浸液体を沸点に達するまで熱することは不可能であるとも主張する。しかし、原告においても、本願発明が被処理物の表裏両側に蒸気を吹付けることにまでその特許を請求するものでないことはその自認するところ(このことはまた、本件特許請求の範囲から見ても明らか)であるばかりでなく、この種装置で蒸気を被処理物の両面から吹付けることは、既にその一面から吹付けられることが考慮せられている以上、洵に容易に考えられるところであるから、たとえ引用例のものがその片面吹付けのことだけを記載しているにしても、これが同様両面吹付けに応用できるはこれを当然の前提としているものと認めるのが相当であり、右原告の主張も理由がない。
五、以上のとおりであるから、本願発明と引用例の発明とは結局同一発明の域を出ないものと認め、本願は旧特許法第四条第二号の規定に該当し、同法第一条に規定する特許要件を具備しないものとした本件審決は、その余の争点についての判断をするまでもなく相当であつて、その取消を求める原告の本訴請求はこれを棄却するの外はない。