東京高等裁判所 昭和34年(う)1900号 判決
被告人 中島正樹
〔抄 録〕
所論の昭和三十四年六月十一日付原審第三回公判調書(記録四四丁)によると原審は原判示第二の事実についての昭和三十四年(う)第一六五号窃盗被告事件を併合する旨の決定をしながら、同事件につき刑事訴訟法第二百九十一条第二項の機会にした被告人及び弁護人の被告事件についての陳述の記載がないことはまことに所論のとおりである。しかしながら、刑事訴訟法第五十二条によれば公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものについては反証を挙げて争うことは許されないけれども、公判調書に記載のない事項については当然存在しなかつたものということはできず、他の資料によつてその存否を証明することができるものといわなければならない。(最高裁判所昭和二五年(あ)第二〇六〇号、同二七年三月二五日・第二小法廷判決及び当裁判所昭和二八年(う)第三七三四号、同二九年三月六日第七刑事部判決参照。)しこうして本件においては、当時の立会書記官補たる当審証人内山保輔に対する証人尋問調書によれば、前記公判期日において原審裁判官が起訴状の朗読が終つた後、刑事訴訟法第二百九十一条第二項所定の手続を履践した上被告人及び弁護人に対し被告事件について陳述する機会を与えたところ、被告人は事実はそのとおり相違ない旨を陳述し、弁護人は被告人の陳述と同様である旨を述べたことが明らかであるから、原審の訴訟手続には所論のような違法は存しない。ひつきよう論旨は理由がない。
(坂井 山本長 荒川)
註 本件は量刑不当で破棄