大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(う)1923号 判決

被告人 中桐和子

〔抄 録〕

ところで、原判示傷害致死の事実は原判決挙示の証拠によつて優に認めることができ、記録を精査してみても原判決の事実認定にいささかも誤ある廉は見い出されない。すなわち、暴行の犯意についても、関係証拠とくに被告人の昭和三四年二月四日付検察官供述調書第三項、同月一三日付同調書の各記載などに徴すれば、原判示のごとく被害者陶子の性格挙動に不満をもつた被告人が、右陶子が昼寝中小便をしたことを素直に言わなかつたことに憤慨し、また同女が風呂から上つてからもぼんやりと裸のまま風呂場の脇の廊下に立つていたことに激昂して同女に対して原判示のごときかずかずの暴行を加えたことはまことに明らかであつて所論のように、その動機において右陶子の親権者として専ら同女の性格、動作習癖などを矯正しようとする監護教育的配慮に出たものであるというがごとき事実は認められないし、従つて陶子に対する深い愛情によつて支えられた所為であつたとは、とうてい、いい得ないところである。それ故に、被告人が暴行の犯意に出でたものと判示した原判決が誤つているとは認められない。のみならず、仮りに被告人が所論のごとく終始陶子に対する親権者として、いわゆる懲戒権を行使する意図に出でたものであるとしても、それにはおのずから限度があり、社会通念上正当と認められる程度並びに範囲のものでなければならないことは、敢ていう迄もない。しかるに、被告人は、原判示のごとく、当五年一一月の陶子(昭和二八年二月二二日生)に対して、板の間及び風呂場に突き倒し、さらに手でその顔面及び臀部を殴打し、さらに裸にして浴槽内に頭まで押し込み、はては風呂から上つてぼんやりと裸のまま風呂場の廊下に立つている同女を後から突き倒すなどの所為に及んだのであつて、かくのごときはまさに同女に対する懲戒権の行使として正当な範囲を越えた処置であり社会通念上許すべからざる行為であるというの外なく、従つて、違法性を阻却すべきわけのものではない。ところで、親権者が監護教育権又は懲戒権の行使としての程度を超えたために、子に傷害の結果を生ぜしめた場合に過失傷害罪の成立を認むべき事案もあるであろうけれど、本件はこれと異り、被告人は当初より暴行の意思に出でて原判示致死の結果を惹起させたのであるから、被告人の責任たるや過失犯をもつて論ずべき筋合ではない。従つて、原判決が被告人の判示所為につき刑法第二〇五条第一項の傷害致死罪に該当するものとして被告人の責任を問うたのはまことにその所であつて、なんら法令の適用を誤つたものではない。

(尾後貫 堀真 西村)

註、本件は量刑不当で破棄

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