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東京高等裁判所 昭和34年(う)2187号 判決 1960年4月13日

被告人 李其燮

主文

本件控訴を棄却する。

理由

論旨第一点について

所論は要するに、本件は業としてあん摩を行つたものではない。被告人は本来湿熱療法(蒸風呂)を営むものであるが、この療法は長時間蒸風呂に漬かるため身体に疲労を覚えるので、これを癒やし且つ同療法を効果的ならしめるため受療者を寝台上に安臥させて手指をもつて背骨の両側や手足の急所を押圧したものであり、いわば湿熱療法に附随する後手当を施したに過ぎず理髪師が理髪後に行うの頭、肩の按撫打圧と同様のものであるから、これをもつてあん摩を業として行つたということはできないと主張するのである。

よつて案ずるに原審証人持田千太郎の供述記載及び被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書の記載によれば、なるほど本件指圧又はマッサージは概ね蒸風呂から上つてきた者に対して施されたものではあるが、しかし右マッサージ等は内容効果からみて一般あん摩師の行うものと少しもかわるところはなく、その料金も蒸風呂代が一回百五十円であるに対し、入浴後のマッサージ代は三百円ほどであり、単なる蒸風呂の附随的なものではなく、蒸風呂とは独立した別個の存在であつたことが認められ、到底理髪師が理髪後に行う頭、肩の按撫打圧と同一視し得べきものではない。

原判決が本件をあん摩を業として行つたと認定したのはもとより正当であり、論旨は理由がない。

(その余の判決理由は省略する。)

(裁判官 長谷川成二 白河六郎 関重夫)

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