大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(う)2280号 判決

被告人 門脇正伍

〔抄 録〕

次に所論は、被告人の原判示行為はまだこれをもつて本件パチンコ玉窃取の実行に着手したものということができないのにかかわらず、原判決が右着手があつたものと認定したのは事実誤認であると言い、本件のようにパチンコ玉窃取という特殊態様の窃盗にあつては、原判示のように被告人が単にセルロイド板をパチンコ機械の内部に挿入しようとしてその硝子扉下面に押し当てただけで、さらに進んで右セルロイド板を内部に挿入しパチンコ機械の釘と釘との間にこれを橋渡状に安定させたうえ所論の種玉をはじいてこれを誘導し当り玉取得の可能性が発生するまでの段階にまだいたらず、もつてパチンコ遊戯本来の仕組である偶然の輸羸性がなお残つている場合には、被告人の前記行為は、いわば窃盗の予備に過ぎないもので、まだその実行に着手していないものとみるべきであると主張する。

しかし、およそパチンコ玉をその遊戯本来の方法によらないでパチンコ機械から不正に取得(窃取)する目的の下に、あらかじめ用意したセルロイド板を、これを使用してはじいた種玉を当り穴に誘導するよう、右機械内部の釘の辺にしかけるため、これを挿入しようとしてその硝子扉下面の隙に押し当てたときは、あたかも他人の着衣のポケツト内部の物を窃取しようとしてその外側に手を触れた場合と同じように、すでに行為の外形において一般的にパチンコ玉の不正取得(窃取)の意図の実現が始まつたとみられるから、被告人は窃盗の実行に着手したものというべきである。所論は、独自の見解に立つて原判決を攻撃するもので採用のかぎりでない。

(兼平 足立 関谷)

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