大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(う)396号 判決

被告人 石村幸一郎

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意第一点について。

所論は、公職選挙法違反事件は、行政犯ともみるべきものであるから、違法の認識を要するものと解するところ、被告人は、原審において、「昭和三三年四月二八日石村幸一郎後援会の解散総会を大前神社参籠所において開催する以前に、遠隔の地に居住する後援会の連絡委員に交通費として金員を交付することが果して公職選挙法違反となるか否かにつき疑念を抱いたので、その疑念を一掃すべく、その秘書岸清をして栃木市に事務所を有する榊原弁護士に法律上の意見を求めさせたところ、同弁護士の意見は、後援会解散総会開催に伴い、遠隔の地より同総会に臨む会員に交通費を交付するも、違反とならないとのことであつた旨の報告に接したので、原審摘示の如く、前記日時に開催された総会の会場において、交通費として一定の金員を一定の者に交付した一旨強調しているのであつて、被告人としては、右金員の授受につき違法の認識がなかつたものであるから、犯意を阻却し、無罪である旨を主張するのであるが、しかし、自然犯たると行政犯たるとを問わず、犯意の成立には違法の認識を必要としないと解すべきことは、つとに最高裁判所判例の示すところであつて、原判決挙示の関係証拠によれば、被告人には、原判示公職選挙法違反罪の構成要件たる具体的事実の認識を有していたことが明らかであるから、仮に、所論のような弁護士の意見を徴した事実があつて、違反にならないものと信じていたとしても、それは、ひつきよう法律の錯誤にほかならないものであつて、犯意を阻却しないものといわなければならない。故に、この点の所論は採るを得ない。なお所論は、仮に、被告人が弁護士の法律上の意見に基いてなした行為が、法令の誤解によるものとして犯意を阻却しないとしても、以上の如き弁護士の法律上の意見を信じてこれに基いてなした行為については、「刑法第三十八条第二項によつて減刑」(「……」の部分は原文のまま)されねばならないものであるから、これをしなかつた原判決は不当である旨主張するのであるが、しかし、所論刑法第三八条第二項は、右の場合にあてはまる規定でないことが明らかであるし、又、もし、所論が同条第三項但書の規定を指示する趣旨であるとしても、同但書に規定する減軽は、必ずこれをしなければならないものではなくて、裁判所の自由裁量に委ねられているものであるところ、記録を精査し、当審における事実取調の結果に徴して検討してみても、被告人に対して右の但書に規定する減軽をなすべき情状があるとは考えられないから、原判決がこれをしなかつたことが所論のように不当であるということはできない。この点の所論も採用しがたく、論旨は、すべてその理由がない。

(中西 山田 鈴木)

〔註〕 本件は量刑不当で破棄

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