大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(う)87号 判決

被告人 八辻隆

〔抄 録〕

一件記録によれば、被告人は昭和二十七年七月十六日勾留状の執行を受け、同月二十二日傷害恐喝罪として水戸地方裁判所常陸太田支部に起訴され、同月二十八日保釈許可決定により釈放された者であるが、右保釈中に逃亡したため同年九月十八日保釈取消決定が為され、昭和三十三年十月三十一日右保釈取消決定により太田警察署に収監され、爾来勾留継続の下に水戸地方裁判所常陸太田支部の審理を受けていたところ、同年十二月二十三日同支部において「被告人を懲役一年に処する。未決勾留日数中三十日を右本刑に算入する」旨の判決宣言を受けたことが明らかである。従つて被告人が本件において勾留せられた日数は、判決時までに三十日を超えるものがあるから、原判決の未決勾留日数の算入は一見違法ではないとみえるのである。しかしながら被告人は本件とは別に、逃亡中に犯した窃盗賍牙保罪により八日市場簡易裁判所に起訴せられ、昭和三十三年十月二十日懲役一年及び罰金五千円の判決を受け、上訴することなくして同判決が確定したところ、その当時被告人はその事件で勾留されていたことが記録に徴し認められるから、右判決言渡後上訴提起期間中の未決勾留日数は、刑事訴訟法第四百九十五条により全部本刑に通算さるべきものであること明らかである。してみれば被告人が昭和三十三年十月三十一日保釈決定によつて太田警察署に勾留されるに至つても、八日市場簡易裁判所の判決確定に至るまでは、同事件の勾留と本件の勾留とが競合し、しかも前者は法律上当然に本刑に算入せられること前記のとおりであるから、これと競合する本件の未決勾留日数を本刑に算入することは失当である。又記録によれば八日市場簡易裁判所の判決確定するや、同年十一月五日より同判決による懲役一年の刑が執行されるに至つたことが認められるから、右刑の執行を競合する本件の未決勾留日数も亦本刑に算入することが許されないものである。もしそうでないとすれば既に本刑に通算された別件の未決勾留と競合する関係にある未決勾留日数或いは刑の執行と競合する未決勾留日数についても本刑に算入されることとなり、不当に被告人を利することとなり、刑法第二十一条の趣旨に反すると解せられるからである。然るに原判決は前記のとおり本件における未決勾留日数三十日を本刑に算入することとしたのであるが、それは昭和三十三年十月三十一日以後の未決勾留日数が、他事件に於て法定通算せられる未決勾留又は刑の執行と競合していることを看過し、本件において本刑に算入され得る日数以上の未決勾留日数を通算した違法があるというべきで、この違法が判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、論旨は理由があり、原判決はこの点破棄を免れない。

(足立 堀(真) 山岸)

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