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東京高等裁判所 昭和34年(く)13号 決定 1959年7月09日

少年 T(昭一七・一・六生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は少年本人提出の抗告申立書に記載のとおりであつて、要するに原決定の処分が著しく不当であると云うに帰する。よつて右少年に関する保護事件記録(本件記録外三件)並びに少年調査記録を審査し、並びに当裁判所における事実の取調の結果に徴するに、少年は身体の発育、体格、健康は通常であるが、自己顕示性が強く、暴発性の傾向が大であり、落付がなく、口よりも手が先に出ると云う風があり、また本人の家庭は母はなく、父、兄夫婦、姉等と同居しているが、少年は父及び兄夫婦とは親密感を欠き、父及び兄も少年の再三の非行に保護意欲を失つた観があり、またその監護の能力に於ても欠けるところがあると認められる。少年は昭和三十年九月、中学二年在学中、不慮の事故により実母を失つて後、家庭的愛情に満たされず、次第に不良化し、昭和三十三年二月〇大附属高等学校一学年を中途退学後は不良の徒と交友を続け、同年九月頃自宅より現金一万八千円を持ち出し、横浜市内に下宿し一時果実店に勤めたが生活に困り同年十一月頃家に帰り自宅から横浜市内〇〇〇洋装店に通勤することとしたが十二月始頃身体が疲れるというのでそこをやめその後間もなく兄と口論して家をとび出し、同じく家出中のAと行動を共にしているうち本件非行をするに至つたものである。少年はその前にも、昭和三十三年三月四日頃外三名と共に小田急江之島線六会駅において、学生Hに対し暴行を加えたことがあり、また同年五月十三日頃、外一名と共謀の上小田急江之島線長後駅で学生Yより金員を喝取しようとして遂げなかつたことがあつて、右事実について横浜家庭裁判所に送致され併合の上昭和三十三年十月二十八日不処分決定を受けたものであるのに、本件非行に及んだものであり、且つ本件以外にも昭和三十三年十一月十一日午後三時頃小田急江之島線大和駅においてA外一名と共謀の上学生Kより腕時計を喝取していたことが発覚し、昭和三十四年二月二十六日横浜家庭裁判所において、本件保護処分決定を前提として不処分決定を受けていることが認められるのである。

以上のような少年の性格家庭情況並びに非行歴に徴するときは少年に対してはこの際相当期間矯正的教育施設に収容し、その性格を陶冶し、善良な社会人として社会に立たせる方法を講ずることが、本人の為最も必要であると認められ、原決定もこれと同趣旨に出たものと解せられるから、原決定は相当である。

よつて少年法第三十三条第一項により本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 坂井改造 判事 山本長次 判事 荒川省三)

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