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東京高等裁判所 昭和34年(く)134号 決定 1960年4月19日

少年 S子(昭一五・七・一〇生)

主文

本件各抗告を棄却する。

理由

本件各抗告の趣意は、少年S子提出の申立書と題する書面及びその法定代理人A提出の抗告申立書に記載されたとおりであつて、要するに、原決定のなした処分は著しく不当であるということに帰する。

よつて本件少年保護事件並びに少年調査各記録を調査し、且つ当審において少年の実兄B提出にかかる上申書を参照して勘案するに、少年は十七才頃保護者に無断で家出上京し、その後不良の徒と交わり、浮浪生活を続け、その間情夫をつくり、生活の資を得るため売春を行うようになり、昭和三十四年二月八日売春防止法違反により検挙され、同年五月三日東京家庭裁判所において保護者のもとへ帰住することを条件として試験観察に付せられたところ、同日実兄に伴われて帰郷する途中逃げ出してひそかに情夫方へ戻り、それ以来同裁判所及び保護者にその所在を明らかにしないで情夫と同棲したり住込女給等をして過ごし、その間男児を出産したが、依然として売春を続け、同年十一月四日同法違反により検挙されたものであつて、原決定後少年の父及び内夫Cの姉等において少年と内夫とを正式結婚させた上正当な家庭生活に入らせるよう努力したが、右Cは男児を姉に託したまま所在をくらましている状況で、両者の結婚の見込みもなくなり、他面、少年の性格は自己顕示性、気分易変性、即行性顕著で、心情質変調を有しており、家庭環境は必ずしも悪くはないのであるが、敍上少年の生活史、性格等を考え併せると、少年の危険性は相当高度に達しており、到底在宅保護ではこれを除くこと困難であり、この際少年を施設に収容して矯正教育を施し、社会適応能力を育成することが至当であると認められ、この措置に出た原決定の処分は相当である。その他原決定には、決定に影響を及ぼすべき法令の違反、重大な事実の誤認、処分の著しい不当ありと疑うべき事由は存しない。

よつて本件各抗告は理由がないからこれを棄却することとし少年法第三十三条第一項により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 岩田誠 判事 渡辺辰吉 判事 司波実)

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