大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(く)22号 決定 1959年6月16日

少年 A(昭一四・二・二〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は別紙記載のとおりであつて、要するに原裁判所の処分が著しく不当であるというに帰する。

しかし本件保護事件記録並びに少年調査記録を調査し並びに当審における事実の取調の結果に徴すれば、少年(原決定後昭和三十四年二月二十日を以て成年に達している)は、これまでに昭和三十一年九月頃より昭和三十三年十一月頃までの間、暴行、恐喝、傷害、脅迫、詐欺等の嫌疑で検挙されること十数回に及び、家庭裁判所にも十回送致され、二回保護観察処分を受けたほか、検察官送致処分を受けたことも一回あり、その他成年者と詐称して刑事処分を受けたこともあつて、昭和三十三年四月二日より同年十一月二十八日までの間四回に亘り暴行または脅迫罪により三千円ないし一万円の罰金に処せられたもので少年の従前の非行はいずれも飲酒の上の出来事である。そして東京少年鑑別所の鑑別の結果によれば、本人の身体の発育、健康状態には異常がなく、知力にも特に障碍は認められず、ただその性格において情意変調が高度で、精神病質の疑はあるが、内因的精神疾患は認められないものである。本人は本件当時保護観察中であつたが、保護司との連絡もとつておらず、保護観察の結果も不良で、また再三飲酒の上非行を反覆していることから見て、本人は酒乱であることを十分自覚しながら、これを自制することなくまたまた飲酒の結果本件の非行を敢てするに至つたものと認められるのである。しかして本人の実父B(明治三十八年生)は下水工事職人であり、少年もこれに手伝つて平均五万円程度の月収があるが、同人も殆んど連日飲酒し酒癖悪く、少年の監護養育には無関心であり、実母C(明治四十三年生)は少年に愛情を以て接しているが、少年を甘やかしている嫌があつて、家庭の環境は少年を規律的に監護し、本人をして反省により更生させるには不適当である。少年は今回の非行について悪かつたことを認めているが、ひたすら罰金で済してもらいたいとの希望を反覆するのみで、自己の性格殊にその酒癖の矯正につき反省工夫するの態度は認められなかつた。以上のような本人並びに家庭の状況の下において、少年を家庭に復帰させても、本人の改善は望み難いのみならず、再犯の虞もまた少くないのであつて、むしろ本人に対しては相当期間これを矯正保護施設において規律的訓練の下にその性格を矯正させ人格を陶冶させるよう努めると共に自ら反省修養する機会を与えることが本人将来のためにも適切妥当な措置であると認められるのである。従つてこれと同趣旨の下に少年を中等少年院に送致することとした原決定は相当であつて、本件抗告は理由がないから、少年法第三十三条第一項によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 坂井改造 判事 山本長次 判事 荒川省三)

別紙(坑告理由)

(一) 三十三年十一月十二日暴行罪で捕る。

三十三年十一月二十八日刑事しよぶんで罰金一万円。

(二) 三十四年一月二十九日恐はく罪で捕る。

二月十七日審判で中等少年院きまる。

二月十九日○○学院に送り。

右の通りでありますが何にしろ事件が事件なので此ちらに来ても事件の事が気に成り思う様に修養が出来ないので手数でしようが裁判に掛けたいと思いますのでもう一度裁判に掛けて下さいお願い致します弁護士は家の方で頼みますからよろしくお願い致します。(昭和三四年二月二〇日)

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