東京高等裁判所 昭和34年(ツ)121号 判決
然しながら口頭弁論の方式に関する規定の遵守は調書に依りてのみこれを証することを得るものであることは、民事訴訟法第百四十七条の明規するところであり、そして当事者出頭の有無に関する記載が右に該当するものであることは疑を容れぬところである。所論は昭和二十八年四月三十日甲府簡易裁判所昭和二十八年(イ)第一五号債務弁済事件の和解期日に上告人等が出頭しないのにも拘らず、右和解調書に出頭の旨記載されているのを直に採て上告人等が右和解期日に出頭したものと判断したのは違法であつて、調書と雖もこれが無形偽造に係る場合においては民事訴訟法第百四十七条の証明力を有しないものとすべきであることを前提として、上告人等が右期日に出頭していないことの証拠につき屡々と述べているのであるが、民事訴訟法第百四十六条第二項の規定により関係人の調書の記載について異議を述べる機会を与えている反面、調書の記載に誤りがあるとして異議を述べた場合の外口頭弁論の方式に関する規定の遵守については、民事訴訟法第百四十七条の規定により、訴訟手続の明瞭と安定とを期するために作成される口頭弁論調書のみが唯一絶対の証明力を有し、反証を許さないものと解するのを相当とする。従て仮に所論のように前記和解期日に上告人等不出頭の事実があつたとしても、右期日の調書に上告人等出頭と記載されている以上、所論の他の証拠によつてこの記載事項を誤謬とするに由ない。所論調書の無形偽造の場合に、無形偽造の証明を許すべしとの学説が存し右学説は立法論として傾聴に値するが現行民事訴訟法第百四十七条の解釈論としてはこれを採用しがたい。
(梶村 岡崎 堀田)