東京高等裁判所 昭和34年(ツ)37号 判決
しかし賃借人が賃貸人の承諾を得ないで賃借権の譲渡または転貸をした場合であつても、賃借人の右行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情のあるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項による解除権を行使し得ないものと解すべきことは最高裁判所昭和二十八年九月二十五日第一小法廷判決(判例集第七巻第九号九七頁参照)及び同三十年九月二十二日第一小法廷判決(判例集第九巻第十号一二九四頁参照)の判示するところである。もとよりかかる特段の事情のあることについては、無断転貸(若しくは賃借権の譲渡)を理由とする解除の無効を主張する賃借人の側で主張し且つ立証する責任のあること当然であるところ、原判決は被上告人等の主張立証にもとずきその引用の証拠によりかかる特段の事情あることを認定説示し、これに対する上告人の反対主張を斥けて本件解除は無効なる旨を判断したものであつて、右特別の事情の有無につき原判決の認定する諸般の事実に徴して考うれば右原判決の法律上の判断は正当であつて、原判決には民法第六一二条の解釈適用を誤つた違法はない。右と反対の見解に立つ所論は採用できない。
(柳川 坂本 中村)