大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ツ)60号 判決

原判決ならびに原判決引用にかかる第一審判決の事実摘示によれば、上告人は原審において、「訴外吉井賢治がかねて脱退被控訴人からその所有に属する本件係争の土地を含む六筆の土地(浦和市大字上木崎字皇山七百二十四番の七、八、十三、十四、同所七百二十五番の六、七)合計約四百坪を一括して建物所有の目的で賃借し、係争外の土地に木造瓦葺の居宅を所有していたこと、ならびに上告人は昭和二十三年八月頃右建物を同訴外人から買い受け、同年九月十六日その登記をすると同時に、前記の土地全部について建物所有を目的とする賃借権を一括して譲り受け、脱退被控訴人の承諾を得た。」と主張していることが明らかであるが、記録を調査しても、被上告人が本件訴訟に参加した以後において、上告人が右主張を撤回した形跡は認められないから、右主張は被上告人に対する関係においても維持されているものと認むべきものである。而して、訴外吉井賢治がかねて脱退被控訴人から上告人所論の土地六筆を賃借しその一部に建物を所有していたこと及び上告人が昭和二十三年九月頃右吉井賢治から右建物を買受け、同時に吉井賢治の右土地の借地人たる地位を承継したことは原判決の確定した事実であつて、同年九月十六日上告人のために右建物の所有権移転登記をしたことが当事者間に争ないことは原判決ならびに原判決引用にかかる第一審判決の事実摘示により明らかである。被上告人の本訴請求原因は、第一次的には所有権に基き本件係争土地の明渡を求めるものであるところ、本件土地(字皇山七百二十四番の七、八、十三同所七百二十五番の六)がもと脱退被控訴人の所有であつたことは当事者間に争いがなく、右土地を被上告人が昭和三十一年九月二十五日脱退被控訴人から約金三百万円の貸金の代物弁済として譲り受け、翌二十六日所有権移転登記手続をしたことは原判決の確定した事実であるから、もし脱退被控訴人において前記上告人の借地権承継を承諾した事実があれば上告人は建物保護ニ関スル法律第一条により、土地の賃貸借を以て被上告人に対抗しうべきものである。従つて、原裁判所としては、上告人の前記主張事実にかんがみ、上告人が前記法条所定の対抗要件を主張するものであるかどうかを釈明し、もし主張することが明らかになつた場合には、脱退被控訴人が借地権承継を承諾した事実の存否ならびに対抗しうべき賃借権の範囲について審理判断しなければならないものである。しかるに原裁判所はこれをなさず、「控訴人(上告人)は右参加人(被上告人)に対抗することができる権原を有することについて主張も立証もしないから」と判示して上告人に敗訴の判決を言い渡したのは、ひつきよう釈明権行使の義務を怠り、審理を尽くさず、延いて理由不備の違法があるに帰するから、原判決を破棄して原審に差し戻すべきものである。

(奥田 岸上 下関)

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