東京高等裁判所 昭和34年(ネ)1184号・昭34年(ネ)1029号 判決
控訴人山一水産は、控訴人今村は右事故の際友人の伊藤務をその自宅に迎えに行くため勤務時間外に勝手に会社の自動車を持ち出して運転していたのであるから、会社の業務の執行につき第三者に損害を加えた場合にあたらないと主張するので、この点について考える。原審証人伊藤務、原審及び当審証人村田健一、当審証人山川力男の各証言、原審における控訴人山一水産代表者鈴木新次、原審及び当審(第一、二回)における控訴人今村修各本人尋問の結果を綜合すれば、控訴人山一水産は鮮魚その他の海産物の委託販売等を目的とする会社で、その取扱商品の運搬、配達等のために前記小型四輪貨物自動車を所有使用し、控訴人今村を常時(勤務時間は通常朝の六時ころから夕方の五時ころまで)右自動車の運転業務に従事させていたものであるが、たまたま本件事故のあつた日の前日である昭和三十一年十月十三日控訴人今村は右控訴会社勤務の古参社員伊藤務から乞われるままに右自動車を運転し同人を同乗させて勝沼町へ葡萄の買出しに行き、夜遅くなつて甲府市に帰つたので、ついでにその車で右伊藤を同市湯田町の同人の宅へ送りとどけ、自分は会社に一泊し翌十四日早朝、前夜の伊藤の依頼に基き同人をその宅から同乗させその妾宅へ葡萄を運搬して会社に帰るべく、会社から右自動車を空車のまま運転して伊藤の宅に向う途中右衝突事故を起したものであることが認められる。そして被用者の行為が、外形的にみてその職務行為の範囲に属し、従つて客観的にみてそれが使用者の事業の範囲に属する行為であるときは、被用者の主観的な意図いかんにかかわらず、またその者の通常の勤務時間の内外を問わず、その行為は民法第七百十五条にいわゆる使用者の事業の執行にあたるものと解するのを相当とする。しからば前示のように控訴人山一水産の運転手である控訴人今村が同会社の先輩社員である伊藤の依頼により同人を同乗させて荷物を運搬すべく同会社の自動車を運転して前記事故を起した場合には、たとえ右運転が伊藤の私用のために通常の勤務時間外にしたものであつても、外形的にみればそれは控訴人今村の職務行為の範囲に属し、従つて控訴人山一水産の事業の範囲に属する行為であるということができるから、右事故は控訴人今村が控訴人山一水産の事業の執行につき起したものであるというべきである。従つて控訴人山一水産の右主張は採用することができない。
(川喜多 位野木 安岡)