東京高等裁判所 昭和34年(ネ)127号 判決
ところで、債務者が利息制限法に定める制限を超過した利息又は損害金を任意に支払つた場合、その支払の約定は同法第一条第四条の各第一項により無効であるから、利息損害金の弁済たる効力を有せず、それは本来債務者に返還さるべき筋合であるけれども、特にその各第二項において返還の請求をなし得ない旨定めている故、元本債権にして存在するならば、右支払額は当然元本に充当されるものと解するのが相当である。かく解することは同法第二条で貸借成立の際に天引した超過利息を元本の支払に充てたものとみなす旨規定している法意にも通じ、且つ高利金融に対し経済的弱者たる債務者を保護せんとする同法制定の趣旨に適合する所以である。本件において、被控訴人青木は前記の如く(一)昭和二十九年九月二十四日金十一万二千円を損害金として支払つたのであるから、元本百三十万三千八百十一円に対する弁済期の翌日以降前記の日まで十三日間の制限率(年三割即ち日歩金八銭二厘一毛弱)によつて計算した損害金一万三千九百三十三円を除く残余の九万八千六十七円は元本に充当される結果、残元本は百二十万五千八百十四円となるべく、(二)同年十二月三日損害金として金十一万二千円の支払があつたが、そのうち前回弁済日の翌日以降七十日間の同率の損害金六万九千三百八十一円を除く金四万二千六百十九円は元本に充当され残元本は金百十六万三千百九十五円となり、(三)同月二十七日支払われた金十一万二千円のうち、同様にして金二万二千九百四十七円は二十四日間に対する損害金として、残額八万九千五十三円は元本にそれぞれ充当され、残元本は百七万四千百四十二円となり、(四)昭和三十年二月二十四日元本に金二十万円損害金に二十二万四千円合計四十二万四千円の支払があつたところ、右損害金に支払われた分のうち、五十九日間の制限率による損害金五万二千九十二円を除く金十七万一千九百八円は元本に充当されるので、残元本は差引き七十万二千二百三十四円となり、(五)同年四月五日支払つた金十二万九千円のうち、同様四十日間の損害金二万三千八十八円を超える残余の十万五千九百十二円は元本に充当され、残元本は金五十九万六千三百二十二円となり、(六)同年四月十六日支払の金十五万円のうち、十一日間の前同率の損害金に当る金五千三百九十二円を除く十四万四千六百八円は元本に充当され、残元本は金四十五万一千七百十四円となり、(七)同年八月二十七日元金に金五万円損害金として金二十八万八千円右合計三十三万八千円を支払つたところ、損害金として支払われた分のうち百三十三日間の前同率の損害金四万九千三百八十二円を除く残余は元本に充当される結果残元本は金十六万三千九十六円となり、(八)同年十二月十日金四万六千五百円を支払つたが、そのうち百五日間の前同率の損害金一万四千七十五円以外の三万二千四百二十五円は元本に充当され、残元本は十三万六百七十一円となり、(九)昭和三十二年四月十九日強制執行により金十九万八百円の売得金交付があるまで四百九十五日間の前同率の損害金は五万三千百五十七円であるから、残余の十三万七千六百四十三円は凡て元本に充当さるべく、従つて残元本は皆無となるのみか、却つて約七千円に近い過払となる計算となる。
(二宮 奥野 大沢)