東京高等裁判所 昭和34年(ネ)1299号 判決
被控訴人が控訴人東邦産業株式会社に対し、昭和三十二年八月十五日、金五十万円を利息日歩三銭、弁済期昭和三十二年十一月十四日として貸与することを約したこと、その際契約書に貼付する印紙代五十円、被控訴人が中小企業信用保険法に基く保険契約によつて右消費貸借の分として負担する保険料のうち金千三百六十円は右控訴人の負担とするとの特約をなしたこと、被控訴人は貸付にあたり元金五十万円に対する期間中の利息金一万三千八百円、右印紙代及び右保険料以上合計金一万五千二百十円を元金五十万円から差引いて残額金四十八万四千七百九十円を右控訴人に交付したこと、控訴人宇士芳郎が控訴人東邦産業株式会社の右債務を連帯保証したことは、いずれも当事者間に争がない。
被控訴人は、「右印紙代は契約の締結の費用であり、利息制限法第三条但書によつて同法第二条の天引利息とならない。また、右信用保険料は特約によつて債務者の負担としたものであつて、同法の適用をうけない。」と主張するので次に判断する。前記認定のように印紙代は契約書作成のために要するものであるから、契約の締結の費用といわなければならない。利息制限法第三条本文は実質的に貸主の利得となるものは、名義のいかんを問わずその実体をとらえて利息とみなすことを規定したのであつて、貸主にとつて実質的な利得とならないものについては適用されないものと解するを相当とする。中小企業者との消費貸借について信用保険契約を締結しなければ消費貸借が成立しない場合のあることをも考えれば、それは双方のためになされるもので、必ずしも貸主の利益保護のもののみとは認めることはできない。右信用保険の保険料は中小企業信用保険法に基く保険契約によつて契約者である被控訴人が支払う義務のあるものであるが、前記認定のように保険料の一部を消費貸借締結の際の特約によつて借主に交付する金額から差引いても、これを実質的に貸主のみの利得となるとは解せられないから、したがつて、また実質的な意味においてもこれを利息と認めることはできない。
(村松 伊藤 土肥原)