大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ネ)1308号 判決

一、被控訴人は本案前の抗弁として、「土地改良法第五二条に基く換地計画は、行政事件訴訟特例法にいわゆる行政処分に当らないから、その取消を求める本訴は不適法である。」と主張するので、まずこの点について判断する。本訴は、原判決添付目録記載の控訴人所有の土地(以下本件従前の土地という)について、被控訴人が土地改良法に基き昭和三十一年二月二十三日定め、同年五月十一日茨城県知事による認可公告のなされた換地計画が違法であるとして、その取消を求めるものであることは、控訴人の主張自体によつて明らかである。ところで、土地改良区が土地改良法に基き換地計画を定めたときは、都道府県知事の認可を受けなければならないのであつて、都道府県知事が右認可をしたときは、遅滞なくその旨が公告せられる(土地改良法第五二条第一項、第八項参照)。右公告がなされたときは、換地計画に定める換地は、同法第六十三条第一項に規定する場合を除いて、原則としてその公告があつた日の翌日から従前の土地とみなされ、換地計画で換地を定めなかつた従前の土地について存する権利は、その公告があつた日が終了したときに消滅するのであり、また土地改良区は換地計画の定めるところに従つて清算金を支払わなければならないし、又はこれを徴収することができるのである(同法第五四条参照)従つて、土地改良区が換地計画を定めただけでは、それ自身法律上の効果を伴うものではないけれども、都道府県知事が認可公告をしたときは、換地計画は換地の関係人の具体的な権利義務に影響を及ぼすものといわなければならない。そして、土地改良区は地域団体に近い性質を有し、公益を目的とする公法人的色彩の濃い法人であつて、土地改良事業の必要上行う換地計画は公権力の行使としてなされるものであることも、疑のないところであるから、都道府県知事の認可公告のなされた土地改良区の換地計画は、いわゆる抗告訴訟の対象となる行政処分に当るものと解するのを相当とする。従つて本訴は適法であつて、右と反対の見解に立つ被控訴人の本案前の抗弁は採用できない。

二、次に本案について判断する。

がんらい、土地改良区は、農業経営を合理化し、農業生産力を発展させるため、農地の改良、開発、保全及び集団化による食糧その他農産物の生産の維持増進に寄与する趣旨で、土地改良法に基いて、区画整理やかんがい排水施設、農業用道路その他農地の保全又は利用上必要な施設の新設、管理廃止又は変更等の土地改良事業を行うものであるから、事業実施の結果、換地は従前の土地より地積が減少し、又は換地の位置が従前の土地からずれたり、或は多少離れたところに定められたりすることは、当然のことで、関係者はそのことを認容しなければならないといわなければならない。土地改良法第五三条は、換地計画によつて定められる従前の土地に照応する換地は、従前の土地の地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を標準として定めなければならない旨を規定しているけれども、右規定の趣旨は、換地が右各標準に照し従前の土地に見合うものとして公平に配分されることを期したものであつて、必ずしも従前の土地の位置に換地を定めることを要求しているものではないと解するのは、区画整理の性質上当然である。従つて、僅かに上記認定の程度しか離れていない位置に定められた本件換地処分は、従前の土地の位置に定められないからといつて、土地改良法第五十三条の趣旨に反するものということはできない。

なお、原審証人根本利雄の証言及び原審並びに当審での控訴本人尋問の結果によれば、本件従前の土地は、もと旧国田村の村有地で村の鎮守である春日神社の祭料はこの田から出されていたが、明治三十一年控訴人の父がこれを買い受け、その後控訴人方では、これを神田として尊重し、毎年十一月の祭礼には、右の田から収穫した新穀のうち一升(当初の頃は酒一升)宛を右神社に奉納してきたもので、被控訴人が換地計画を定めるに当り、控訴人は被控訴人の役員等に対して換地は特にもとの位置に指定されたい旨を要望したことを認めることができる。このような由緒のある田として、本件従前の土地にかくべつの愛着を持つ控訴人の心情は、容易に察せられるところであるけれども、土地改良法に基く換地処分が、上記説明のように公的な目的のために行れるものであることを参酌して判断すると、控訴人だけに存在する右のような主観的事情は、本件換地処分を違法とする事由に当ると認めることはできない。

(村松 伊藤 杉山)

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