東京高等裁判所 昭和34年(ネ)1516号 判決
判決が公示送達の方法によつて送達された場合に、不変期間である上訴期間の遵守について民事訴訟法第百五十九条の適用のあることはつとに判例の是認するところであるが(大判、昭一六、七、一八、民集二〇巻、一五号、九八八頁参照)、同法の定める公示送達は送達場所の不明の者に対しても訴訟書類の送達を可能にするとともに、兼ねて権利者に対しその権利を実効あらしめんがために認められたものであつて、この送達にあつては、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、何時でも送達を受くべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示する(但し、送達すべき書類が呼出状のときはこれを掲示場に貼付する)ことによつて一定時間経過後受送達者が送達書類の趣旨を知つたと否とを問わず当然に送達の効力を生ずるものであるから、義務者が権利者の権利行使を妨害し若しくは困難にする目的で行方を晦まし、そのために権利者がやむをえず公示送達の方法による訴訟書類の送達によつて訴訟を進行し、その勝訴判決が義務者に対し公示送達の方法によつて送達され、義務者がその事実を知らず、上訴期間を遵守することができなかつたというような場合には、それは前記法条にいわゆる「当事者カ其ノ責ニ帰スヘカラサル事由ニ因リ不変期間ヲ遵守スルコト能ハサリシ場合」には該当せず、却つてその反対の「当事者の責に帰すべき事由によつて不変期間を遵守することができなかつた場合」に当るものとして義務者がその後において懈怠した訴訟行為すなわち上訴を追完することは許されないものと解するのが相当である。若しこれと異なる見解を採らんか、義務者はその行方を晦ますことによつて容易に権利者の追及を免れうることとなり、公示送達の実益は大半失われてしまう……であろう。
(牛山 田中 土井)