東京高等裁判所 昭和34年(ネ)1584号 判決
被控訴人らの抗弁の要旨は、その主張の賃借権は右各土地の前示売渡処分によつて混同により一旦消滅したとしても、当時右売渡処分の前提となつた前示買収計画の取消が訴求せられていたので、右売渡処分による賃借権の消滅は形式的一時的なものであつて、右売渡処分が取消され控訴人が所有権を回復した以上、一旦消滅した右賃借権は右消滅時に遡つて復活するものであるから、被控訴人らは現に右各土地を権原により占有するものであるというにある。よつて按ずるに、成立に争のない甲第九号証、乙第一号証によれば、前示買収計画は控訴人が昭和二十年十一月二十三日から右計画樹立までの間本件土地所在地たる椿海村に居住しない所謂不在地主であることを理由に樹立せられたものであるところ前示訴訟において千葉地方裁判所は右買収計画を取消す旨の判決を言渡し、東京高等裁判所は控訴人が同村に住所を有する在村地主であると認めて控訴棄却の判決を言渡したことを認め得べく、該判決が確定したことは当事者間に争がないところである。而してかゝる理由に基く買収計画の取消は、法律上成立すべからざる行為の取消を目的とするものであるから、その取消の効果は既往に遡るものというべく、従つてこれに伴うところの前示農地についての買収処分と被控訴人らに対する右農地の売渡処分の各取消も亦その処分のあつたときに遡つて効力を生じ、かゝる処分が行われなかつた状態に復せしめるものと解すべきである。されば右買収処分及び売渡処分は当初から行われなかつたと同一の結果となり、従つてまた被控訴人らの前示賃借権もまた消滅しなかつたこととなるものというべきである。
(松田 猪俣 沖野)