大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ネ)2696号 判決

一、控訴人の本案前の抗弁について考えるに、控訴人は本件訴訟は二重訴訟であると主張するが、前訴と本件訴訟が民事訴訟法第二三一条に規定する二重起訴の関係にないことは控訴人の主張自体に徴し明らかであるから、控訴人の抗弁の趣旨は、本件訴訟は訴の利益を欠くものである、というにあるものと解すべきである。しかるところ、前訴は被控訴人が破産管財人として昭和二七年六月一三日浦和地方裁判所における前訴第一審口頭弁論期日において否認権を行使する旨の準備書面の陳述により、破産者立川俊三が昭和二三年七月一四日控訴人との間にした原判決別紙目録記載の土地及び建物(以下本件不動産という。)についての代物弁済契約を否認し、本件不動産について控訴人のためなされた所有権移転登記の抹消登記手続を請求したもので同裁判所の判決において被控訴人の右請求は認容され右判決は昭和三二年二月八日確定したことは当事者間に争いがないところ、本件訴訟は本件不動産が既に第三者に売却されたため、これを破産財団に回復することが不可能になつたので、本件不動産の回復に代えて、その価額の償還として、金員の支払を請求するというのであるから、両訴はいずれも否認権行使の結果に基くものではあるが訴訟物を異にしておりかつ前訴の確定によつては本件不動産を破産財団に回復させることができなかつた(この点は弁論の全趣旨によつて認められる)のであるから更に、本件訴を提起し、現物の回復に代る価額の償還を請求する必要があるというべく、本件訴訟は訴の利益を欠くということができない。よつて控訴人の本案前の抗弁は理由がない。

二、控訴人が本件不動産を第三者に売却処分したことは当事者間に争いがないところ、証拠によれば、控訴人は昭和二五年七月三一日本件不動産を訴外野尻正夫に売却し、同日同訴外人が代表者をしている八洲証券株式会社に対し所有権移転登記をなしたことを認めることができる。してみると、特別の事情のない限り被控訴人の否認権行使当時既に本件不動産の登記名義を控訴人に回復し更に破産財団に本件不動産を現実に回復することはできなくなつていたものといわなければならない。しかして本件において特別事情は認められないから、控訴人は本件不動産の回復に代えてその価額を破産管財人に償還する義務を有するに至つたものといわなければならない。右のごとき事情の下において控訴人が償還すべき価額は何時の価額によるべきかについて考えるに、当裁判所は被控訴人が否認権を行使した当時の価額を償還すべきものと解するものであつて、これと異なる控訴人の見解も被控訴人の見解もいずれも、これを採用しない。

(牛山 岡松 今村)

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