東京高等裁判所 昭和34年(ネ)3083号 判決
次に、被控訴人が昭和三十三年四月十五日付書面で、同月中訴外会社の特定の取引先に対し「訴外会社の営業を継承して発足する」旨の通知をし、控訴人もこれを受け取つたことは当事者間に争がなく、そして、控訴人は、このような通知をした被控訴人は商法第二十八条により訴外会社の債務についてその弁済の責を負うべきものであると主張するから、その当否について判断する。
前示被控訴会社代表者尋問の結果によると、前記通知状は印刷によつて百枚作成せられ、そのうち四十枚位が特定の取引先に発送せられたに過ぎないことが認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。そうすると、前記通知は、これをもつて一般公衆に対する告知手段例えば新聞、チラシ等によつて多数人に対し一定の事実を認識させることを本質とする広告をしたものということはできないが、本条の立法趣旨は、営業の譲受人(表見譲受人を含む。以下同じ)が譲渡人(表見譲渡人を含む。以下同じ)の営業によつて生じた債務を引き受ける旨を表示したときは、たとえ、債務引受契約をしない場合でも、債務を引き受けたような外観を作り出したという理由で特に債務弁済の義務を負わせることにしたのであるから、営業譲受人が債務を引き受ける旨を広告によつて表示した場合に限らず、営業譲渡人の債権者に対して個別的に通知することによつてその旨を表示した場合にも、その債権者との関係では、本件に従い、営業譲受人に債務弁済の責を負わせるのが相当である。
ところで、前記通知状にある「訴外会社の営業を継承」という文言は「被控訴人において訴外会社の営業を譲り受け、且つその債務を引き受ける」という趣旨の表示を含むものと認められるかどうかであるが、「営業の継承」ということは通常「営業の譲受」すなわち「営業の譲渡」ということに解せられ、そして、「営業の譲渡」とは先に説示したように、一定の営業目的によつて組織化された有機的一体としての機能的財産の移転のことであり、その機能的財産といううちには営業によつて生じた債務も含まれるから、右通知状は、特別の事情のない限り、「被控訴人において訴外会社の営業を譲り受け、且つその債務を引き受ける」旨の表示を含むものと認めるのが相当である。
(牛山 田中 土井)