東京高等裁判所 昭和34年(ネ)335号 判決
ところで右代物弁済に関する約定は、それが抵当権の設定と同時になされている関係上、債務の不履行と同時に抵当建物の所有権が当然債権者に移転する趣旨のものと見るよりは、債務不履行の場合抵当権の実行をすると代物弁済により所有権を取得することを債権者の選択に委ねたもので、即ち代物弁済の予約と解するのを相当とすべきところ、当審証人平田美世造の証言並に郵便局作成部分の成立に争がなく、その余の部分も真正に成立したと認めうる甲第四号証の一、二によれば、小寺為吉に平田に対する貸金並に代物弁済予約上の権利等一切を被控訴人に譲渡して後、訴外坂井賢治を介しその旨平田に通知したこと(控訴人は元来担保家屋の居住者にすぎず、譲渡債権そのものに対し何等法律上の利益を有するものではないから、前記債権の譲渡につき通知承諾の欠缺を主張しうる正当の利益を有せず、民法第四百六十七条第二項にいわゆる第三者には該当しないので、右通知等のないことを主張する控訴人の抗弁は、それ自体失当であるが、本件においては実際に債権譲渡の通知がなされていたことは右認定のとおりである)及び被控訴人が遅くも昭和三十四年十月九日付同月十六日到達の内容証明郵便を以て平田に対し、代物弁済の予約を完結して本件建物の所有権を取得する旨の意思表示をしたことを認めるに十分である。それ故本件建物がこれにより被控訴人の所有に帰したことは明白である。
(二宮 奥野 大沢)