東京高等裁判所 昭和34年(ネ)91号 判決
控訴人は被控訴人の右意思表示は売買代金を金二十七万円に限定したものであるから右再売買の予約に基く売買完結の意思表示としての効力を有しないと主張し、成立に争のない甲第五号証の記載に原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果を綜合すれば、被控訴人は右予約に基く再売買の代金は前記のように当初の売買代金に再売買当時の時価を勘案して当事者双方の協議の上決定することになつていたのにかかわらず当初の売買代金額二十七万円で買い戻したい希望を有していたので、右内容証明郵便による通告の際も、その金額で買い受けたい趣旨を申し入れたに過ぎないことが認められ、右申入が売買代金を二十七万円とするのでなければ買い戻しをしない趣旨のものであつたとは認めることはできない(控訴人が本訴において前記のように金二十七万円で本件建物の返還をうけることができると主張していることはこの認定を左右するに足りない。)から右申入が再売買完結の意思表示としての効力を有しないものとすることはできない。のみならず、本件のように再売買の予約において再売買の代金を前記のような基準、方法で決定すべきものと定めたとしても、再売買の成立には買主たる被控訴人において売買完結の意思表示をなすを以て足り、右予約で定めた方法により決定さるべき代金額を申出ることは売買完結の意思表示の要件ではない。従つて控訴人の右主張は採用することができない。してみれば、被控訴人が右内容証明郵便を以てした右売買完結の意思表示は有効であつて、これにより控訴人と被控訴人との間に昭和三十一年九月二十六日本件建物の再売買が有効に成立したものというべきである。
(川喜多 小沢 位野木)