東京高等裁判所 昭和34年(ラ)71号・昭34年(ラ)174号 決定
一、民事訴訟法第七百三十三条第一項、民法第四百十四条第二項によつて建物の収去を命ずる決定は、執行裁判所たる第一審の受訴裁判所がすでに確定した判決(本件の場合は確定判決と同一の効力のある和解)の執行の方法としてなすものであつてその債務名義の内容に立ち入つて本案の請求の是非を審議しうべきものではない。したがつて、このような決定に対する抗告も単にその執行の方法たる手続についてのかしを理由としてこれをなすべきものであつて、本案の請求権の存否についての主張は許されないものというべきところ、右抗告人の主張するところは結局本件建物の収去請求権の存在を争い現在相手方三間[栗産]が抗告人に対しこのような請求権を有しないことを主張するに帰着するから原決定に対する適法な抗告理由と認めることはできない。
二、同抗告人抗告理由の要旨は(イ)本件債務名義たる東京地方裁判所昭和三十二年(ワ)第五九六三号事件和解調書に被告として表示されている山佳休瑩なる者は実在しないから右和解調書は無効であり、(ロ)仮りにそうでないとしても抗告人は右山佳の承継人ではないから抗告人に対し右山佳の承継人としてなした原決定は不当であるというにあるところ、右山佳が実在する者であることは本件記録に徴し明白であるから、右和解調書を無効とするべきいわれはなく、かつ前記(一)において説示した建物収去命令の性質にかんがみるときは、抗告人主張の(ロ)の事由は、もつぱら民事訴訟法第五百二十二条に定める執行文付与に対する異議または同法第五百四十六条所定の執行文付与に対する異議の訴において異議の原因となしうるのみであつて本件建物収去命令に対する不服の事由としてこれを主張することをえないものと解するのを相当とするから、同抗告人の抗告もまた理由がないといわなければならない。
(川喜多 小沢 位野木)