東京高等裁判所 昭和35年(う)126号 判決
被告人 大木晃
〔抄 録〕
弁護人は、麻薬窃取について窃盗罪が成立する以上窃取したその麻薬を所持することは窃盗行為に必然的に随伴するものであつて当然窃盗罪に吸収され独立して処罰の対象になるべきではない、特に本件は最初から自ら使用する目的で所持していたもので麻薬の窃取と所持は同一の目的の行為の連続であるから別個独立の犯罪を構成しない、というのであるが、窃取した麻薬を所持することは窃盗罪の外麻薬の不法所持の罪に該当するものであることは最高裁判例(昭和二四年三月五日第二小法廷判決)の示すところであり、右の解釈は麻薬窃取とその所持が自ら使用する目的であつたか将又他に譲渡する目的であつたかによつて左右されるものではない。原審が判示認定の事実につき窃盗罪と麻薬取締法第一二条第一項を適用しこれを併合罪として処断したのは誠に相当である。所論は独自の見解を以て原審の正当な法令の適用を非難するものであつて到底採用するに足りない。
更に弁護人は窃盗犯人が窃取した麻薬の所持という行為に出ないことを期待することは出来ないから責任を阻却されるべきであるというのであるが、被告人が麻薬を窃取し所持をはじめたのちといえども何時でも又如何なる方法によつてもその違法の所持の継続をやめることは可能であるから論旨は理由がない
(長谷川 白河 伊藤)