東京高等裁判所 昭和35年(う)1422号 判決
被告人 田中辰吉
〔抄 録〕
所論は要するに、原判決は、検察官が当初本件課税物品をネオン管と電球類とに分けて起訴した訴因を、検察官のなした予備的訴因変更請求書同訂正書により、右電球類をも総てネオン管と認定判示しているが、原審証人山田英一の証言によれば、ネオン管と電球類との区別は構造上の要請でなく、口金のあるものは電球類で、然らざるものはネオン管で、ガラス管に封入されるガスによつて区別されるものではないとの事であるが、原判決は右口金の有無を確めることなく、漫然総てネオン管と認定したもので、この点につき審理を尽さない違法があり、その他何故ボーダー乃至シークライトがネオン管になるのか、ボーダーについては右山田英一の証言によるも判然し難く、同証言は支離滅裂で到底措信するに足らないし、シークライトについては全然証拠がないと云うに在る。
よつて、記録を調査するに、検察官は、当初本件課税物品をネオン管と電球類とに分けて起訴し、原審第六回公判に於て、右電球類をネオン管として予備的に訴因変更の請求をなし、原審第七回公判に於て、原裁判所によりこれが変更の許可決定があり、右予備的訴因変更請求書、同訂正書によれば、当初電球類として起訴したものを総てネオン管に該当するものとして訴因を変更したもので、原裁判所もまた右予備的訴因変更請求書同訂正書どおり事実を認定したことが明らかである。而して、原審証人山田英一、当審証人山田英一の各証言によれば、国税庁に於ては、昭和二十七年十一月二十五日間消二の一七〇号「物品税法の取扱について」、昭和三十年七月一日間消二の三二号「物品税基本通達の一部改正について」と題する各通達を出し物品税法上ネオン管であるか放電管型電球であるか判定困難なものは、口金を付したものを放電管型電球となし、口金を付さないものをネオン管として取扱つていることが明らかであつて当裁判所に於ても右見解を相当と認める。而して、本件に於ても右通達のとおりネオン管と電球類とを区別して告発起訴したことが認められ、右電球類は、単なるネオン管、アルゴン管と異り、シークライト、ネオン(アルゴン)ボーダーと称し、真直な放電管で口金のあるものとみられていたことも明らかであるのに、原判決は、訴因変更の手続を経た上、右シークライトネオン(アルゴン)ボーダーを総て電球類に非ずしてネオン管なりと認定しているが、原判決援用の原審証人山田英一の供述その他総ての証拠を以てするも、未だ右シークライト、ネオン(アルゴン)ボーダーに右の口金がなく、税率の高い単なるネオン管と見るべきものであつたかどうか到底これを確認することができないのである。然らば、原判決は、この点につき審理不尽により、証拠によらずして事実を認定した訴訟手続の法令違反乃至事実の誤認があつて、その違反乃至誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、爾余の控訴趣意につき判断するまでもなく、原判決はこの点に於て破棄を免れない。論旨は理由がある。
(山田 滝沢 鈴木良)