大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(う)2901号 判決

被告人 宇野允培

〔抄 録〕

論旨は、被告人に対する原判示第二の事実につき、原判決には法令適用の誤りがある、というのである。よつて、原判決を査閲すると、原判決は、その理由中第二において、被告人は日本専売公社より指定を受けた製造たばこの小売人でないのに、昭和三四年一二月一二日頃より同三五年六月一二日頃までの間別紙販売一覧表記載のとおり一八三回に亘り東京都足立区千住河原町二〇番地大和パチンコ店において、山下陽一郎に対し、右公社の製造たばこ「いこい」合計一七二、二三〇個を代金合計七、五七八、一二〇円で販売したものである、との事実を認定した上、右被告人の所為は各たばこ専売法第二九条第二項、第七一条第五号に該当するものとし、各一回の販売行為毎に各別に犯罪が成立するものとして併合罪の規定を適用処断していることは原判文上明らかなところである。所論は、本来被告人の右販売行為は終始単一の意思を以て営業的に(非合法であるとしても)行われ、相手方も単一であり、販売したたばこの種類も「いこい」に限られ、連日短期間内に反覆継続的に行われたものであつて、一種の営業犯ともいうべきものであり、本件の如きは連続犯の規定が廃止された後においても尚本質上包括一罪として律せらるべきものである、と主張するにつき按ずるに、たばこ専売法第二九条第二項にいわゆる販売とは不特定多数人に対してなす目的をもつてなされる有償的譲渡行為を指称するものであつて、右の目的をもつてなされるただ一回の譲渡行為をも販売というに妨げないとともに、営業的に反覆継続的に行われた場合でもこれを包括して一つの販売行為と解するを相当とする。したがつて、同条項違反の所為は、本件のごとく、多数回にわたり反覆継続的に行われた場合においてもこれを包括して一罪を構成するものと解すべきであるから、原判決が本件被告人の所為を各たばこ専売法第二九条第二項、第七一条第五号に該当するものとし、かつ刑法第四五条前段の併合罪であるとして同法第四七条、第一〇条等を適用処断したのは、まさに法令の適用を誤つたものというべく、この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかなところであるから、原判決は爾余の論旨につき判断をなすまでもなく、すでにこの点において破棄を免れない。論旨は理由がある。

(坂井 山本長 荒川)

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