東京高等裁判所 昭和35年(う)3062号 判決
被告人 ロドニー・シー・ゼニングス
〔抄 録〕
右控訴趣意第一について。
所論は刑法第二百十一条にいわゆる業務とは各人が社会生活上の地位に基き反覆継続して行う事務をいうのであるから、被告人が昭和三十四年九月三日米国海軍当局より乗用車及び軍用車の運転許可の無期限停止処分を受け、その後本件事故発生まで自動車を運転していないにも拘らず、本件事故が被告人の業務上の過失に基くものとして、刑法第二百十一条を適用処断した原判決は法令の解釈適用を誤つたものであると主張する。
しかし、被告人の検察官に対する供述調書によると、被告人は昭和三十四年(一九五九年)五月自動車の運転資格を得て以来生活必需品の入手等のため自動車運転の業務に従事していたところ、同年八月十五日に事故を起したため運転許可の無期限停止処分を受けたが、本件事故当日は日光に向う途中から同僚と交替して運転を始め、日光からも再び被告人が運転して帰途につき本件事故を惹起したことが認められるのであるから、右無期停止処分の前後を通じて考察するならば、たとい被告人が前回の事故後本件事故の前日まで全く自動車の運転に従事しなかつたとしても、被告人は自動車の運転を反覆継続して行つていたものと認定するを相当とすべく、右運転許可の無期限停止処分により自動車の運転資格を有していなかつたとしても、これがため被告人の自動車運転が業務に基くものにあらずとなすことはできない。しからば原判決には何ら所論のような法令の解釈適用の誤はなく、論旨は理由がない。
(坂井 荒川 今村)