大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(う)439号 判決

被告人 畠山清雄

〔抄 録〕

よつて所論にかんがみ記録を精査しかつ当審における事実取調の結果をも加えてしさいに検討してみると、被告人に対する公訴事実(原判決挙示の第三の事実)は、「被告人は昭和三一年六月二八日頃横浜市鶴見区末広町二丁目四番地東京芝浦電気株式会社鶴見工場第十工場において広川巖、松浦進の両名が共謀の上同所においてあつた海野謙四郎管理の鋳物屑一屯五十瓩(価格約四万三千七百円相当)を窃取するに際し、その情を知りながら同人らの求めに応じ右鋳物屑の工場外持出に同意したりグレーンを貸与してこれを貨物自動車に積載させたりして同人らの窃盗行為を容易にさせて幇助したものである」というのであつて、右広川及び松浦の両名が共謀の上右(すなわち原判示罪となるべき事実の第二)のごとく鋳物屑を窃取したことは原判決挙示の対応証拠によつて明認されるところである。しかしながら、被告人においてその情を知りながら同人らの求めに応じて右のごとく同人らの窃盗行為を容易にさせたか否やについて審究してみると、右両人において東京芝浦電気株式会社より三菱化工機株式会社に売り渡された機械「ターニング」の解体運搬修理据付をするに当つて、同機械附属品の名目で東京芝浦電気株式会社鶴見工場第十工場にあつた原判示鋳物屑(爪及びスライドベースなど)を同工場から搬出するにつき被告人が諒解を与えたこと及びクレーンを使わせてこれを貨物自動車に積載させたりしたことは認められるのであるが、原判決が対応証拠として挙示する被告人の昭和三一年八月七日付検察官供述調書二通(ただし本件記録第五一五丁以下の第二回及び同第五一九丁以下の第三回)の各記載を検討してみると、被告人としては原審相被告人広川の懇請により前示機械の附属品として爪及びスライドベースなどを搬出するにつき便宜を与えてやつたのに過ぎないのであつて、これらの物件が三菱化工機株式会社に納入されず他に売却されるものであるとは知らなかつたと弁疏するのであつて、右第三回供述調書に原判決が引用するごとき記載はあるがこれによつて直ちに被告人の右弁解を斥けて被告人において右両名が原判示鋳物屑を窃取することの情を知りながら同人らの求めに応じてこれが工場外持出に同意したものとは認めがたく、さらに原審証人笹本剛章の供述によれば、右搬出物件については被告人はこれを一種のサービスとして販売の機械と一緒に渡したものであると申していたというのであること、及び証人村瀬昌介の当審における供述によれば、同人はこれを前示販売機械の附属品として搬出したことを被告人から事後報告を受けたとあるのに徴すれば被告人の右弁解をたやすく排斥するわけにはゆかない。もつとも原判決が引用する原審相被告人広川の同年七月二六日付検察官供述調書第三項第七項第一二項及び同月二八日付同調書第一項並びに同松浦の同月一三日付同調書第五項及び同月一八日付(ただし本件記録第一八四丁以下第二回の分)同調書第二項の各記載には原判示に副うがごとき被告人に不利益な部分が散見されるのであるが、これらはひつきよう右両名が原判示物件の搬出につき被告人の諒解を受けたことを強調した趣旨とみられいずれもそのことごとくを措信しがたく、もつて被告人が右両名の窃盗の犯罪行為に加功した証拠とするに足るものとは認められないし、その他本件記録にあらわれる資料を検討してみても、ついに原判示第三の事実を認定するに足る証拠は発見せられない。であるから被告人に対する公訴事実はその証明がないものであつて、これを有罪とした原判決は事実認定を誤つたというべく、論旨は理由があつて被告人に対する原判決は破棄を免れない。

(尾後貫 堀(真) 堀(義))

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