東京高等裁判所 昭和35年(う)965号 判決
被告人 鈴木作治 外六名
〔抄 録〕
原判示によれば、原審相被告人片山伊平及び同増田寿の両名は、昭和三十四年四月二十三日施行の静岡県議会議員選挙に同県浜名郡から立候補した前田勇の選挙運動者であるが、右片山は、前田に当選を得させる目的をもつて、まだ立候補の届出がない同年三月二十三日頃、増田寿に対し、右前田のため投票取纒方等の選挙運動を依頼し、その資金として現金三万円を交付し、右増田は、右依頼の趣旨に基き、同年四月三日頃被告人ら七名を含む同郡の選挙人九名に対し、前記選挙に際し、同郡から立候補すべき右前田のため投票並びに投票取纒等の選挙運動を依頼し、その報酬として、被告人ら各自に対し、それぞれ現金二千五百円乃至四千円を供与し、被告人らは、いずれもその趣旨を了承して右各金員の供与を受けたというのである。そして、原審は、右金員の交付者又は供与者たる片山伊平及び増田寿を各懲役四月に処し、かつ二年間その各刑の執行を猶予したのであるが、被告人ら七名に対しては、いずれも罰金刑を選択した上、それぞれ一万円乃至一万五千円の罰金をもつて処断しかつ、被告人らに対し、公職選挙法第二百五十二条第一項の選挙権及び被選挙権を有しない旨の規定を適用しない旨の宣告をしていることは、所論のとおりである。しかし、かりに原審において、被告人らに対し、右規定を適用しない旨の宣告をしなかつたとすれば、被告人らは、右各裁判確定の日から、いずれも五年間同条所定の選挙権及び被選挙権を有しないこととなり右片山、増田の両名が、右各執行猶予の言渡を取り消されることなくその猶予期間である二年を経過すれば、再び右選挙権及び被選挙権を有するに至るのに比し、かなりの不利益を受けることとなつて、刑の権衡を失することにもなるのであるから、このことと、被告人ら七名の経歴、職業、生活環境、本件各犯行の動機、態様その他諸般の事情とを併せて考慮すると、原審が被告人らをそれぞれ原判決主文掲記の罰金刑に処し、かつ、被告人らに対し、公職選挙法第二百五十二条第一項の規定を適用しなかつたのは、まことに相当であつて、原判決には、なんら所論の違法はない。
(下村 高野 真野)