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東京高等裁判所 昭和35年(く)144号 決定 1960年12月23日

少年 S(昭一八・九・二八生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

申立人らの抗告理由は抗告申立書記載のとおりであつて、その要旨は、

申立人らは少年Sの親権者又は附添人であるが、少年は昭和三五年一一月一六日東京家庭裁判所において暴力行為等処罰に関する法律違反保護事件につき中等少年院に送致する旨の決定を受けた。しかしながら少年に対して更生及び職業指導について全く信頼すべき東京都中央区日本橋○○町○丁目○番地有限会社○西シート店代表者○沢○夫氏が、原決定後ではあるが少年を引受けられ、同氏は従業員六名を使用して寝食を共にし、右従業員中には二十数万円の貯蓄をしている者、日比谷高校を優秀な成績で卒業した者などが居り、附添弁護人としては、以前夜間学校の教師をした経験と検定受験の際のささやかな教育学の知識を以て考えるに、少年を少年院に送致するより右○沢氏にその保護矯正を委ねるのを相当と確信する。よつて原決定には不服であるから抗告に及んだ次第であるというのである。

よつて本案少年保護事件記録及び関係少年調査記録を精査して原決定の当否を検討してみると、右各記録に顕われた少年の非行歴、交友関係、生活態度、不良仲間からの被影響性が強く、勤労に対する持続性に欠けた性格、家庭環境などよりみて、相当期間施設に収容して規律ある勤労生活を通じて性癖を矯正しもつてその保護育成を期する必要があるものと認められ、所論のような雇主の指導をもつてしては右目的の達成は困難とみられるが故に、中等少年院送致の原決定はまことに適切というべきであつて、原処分を著しく不当と目すべき跡はない。であるから本件抗告は理由ないものとして棄却せられるべきである。

よつて少年法第三三条第一項後段を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 堀義次)

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