東京高等裁判所 昭和35年(く)26号 決定 1960年8月17日
少年 J
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は、少年は度々傷害事件を惹起したが今度こそは真人間に立帰らせ度く念じて居り尚就職先の○○建材代表者○木○介も全責任を以つて監督指導することとなつており家族親戚においても全面的に協力すべく期待に副うことを誓つているから少年院送致の決定を取消されたいというにある。
よつてJに対する少年保護事件記録並びに少年調査記録を調査するに、原裁判所は、少年に対する保護事件につき昭和三五年一月一三日(1)賍物収受(2)公務執行妨害傷害(3)乃至(5)各傷害の事実を認定した上少年を中等少年院に送致する旨を言い渡したものであるところ、原決定にもいうように、少年は、昭和三三年二月一〇日原裁判所において恐喝保護事件により横浜保護観察所の保護観察に付されたのをはじめとして、同年一〇月二三日原決定(1)に認定された事実により試験観察に付され、昭和三四年五月四日原決定(2)(3)に認定された事実により試験観察の続行を受け、更に同年九月四日原決定(4)に認定された事実により試験観察の続行を受け、その間三回に亘つて横浜少年鑑別所に収容され、審判の郡度更生を誓い、保護者、親族、保護司等が少年の更生に努力して来たが、その後重ねて原決定(5)に認定された非行を犯すに至つたものであり、少年がかように非行を反覆した主な要因は、その知能が低い上に、性格的に感情の抑制力に欠け、自己顕示的、衝動的であつて、自己の非行に対する反省の念が乏しく、その家庭環境については、実父は死亡し、実母、兄弟等には少年の更生に対する意欲はあるが盲愛の嫌もあつて十分な保護矯正の能力ありとは認められず、又現在の雇主である○○建材代表○木○介が少年の保護を申し出てはいるが、少年の非行歴、非行の要因等に照らすと同人の保護に委かすことが適切な処置とも考えられないのであつて、以上の諸点に少年の年令等諸般の事情を併せ考えると、少年の健全な育成を期するためには、むしろ、中等少年院に収容して専門的な矯正教育を施すことが相当と考えられるのである。然らば、これと同趣旨に出た原決定は正当であつて本件抗告はその理由がない。
よつて少年法第三三条第一項後段、少年審判規則第五〇条に則り本件抗告を棄却することとし主文のとおり決定する。
(裁判長判事 長谷川成二 判事 白河六郎 判事 関重夫)